革新的発明だった「ヴァイオリン」 超絶技巧を愉しむ「悪魔のトリル」

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   先週は、古典派の末期に生まれてあえなく寿命を終えた「アルペジョーネ」という楽器とその楽器のために書かれた数少ない曲の代表として、シューベルトの「アルペジョーネ」ソナタを取り上げました。アルペジョーネはメジャー楽器になり損ねたわけですが、いわば、伝統的な「ヴァイオリン属」の楽器であるチェロやヴィオラを超えることができなかったわけです。

   それでは、アルペジョーネの挑戦を跳ねのけたヴァイオリン属・・代表としてヴァイオリンに登場してもらいますが・・はどのように生まれたのでしょうか?

  • 悪魔の演奏を聴くタルティーニ
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あれ? アルペジョーネとそっくり?

   実は、ヴァイオリンが生まれる以前に、ヴィオール属という擦弦楽器がヨーロッパでは多く使われていました。以前は、ヴァイオリン属はヴィオール属の改良・進化楽器という考え方もありましたが、現在では、この2つの楽器の流れは完全に別個のものだ、とされています。

   現在では「復元された古楽器」としてしか存在しないヴィォール属の楽器はどのような特徴があったかというと(もちろん、長い歴史の間には様々な改良が加えられるので一定ではないのですが)、ヴァイオリンと違うところを挙げると、指板に音程を取りやすくするためのフレットがついていて、弦の数がヴァイオリンより多く五弦や六弦のものがほとんどだった、ということです。あれ?これはアルペジョーネとそっくりですね。アルペジョーネは、「先祖返り」の側面もあったわけです。

   しかし、アルペジョーネが発明された古典派後期~ロマン派の時代、19世紀初頭には、ヴィオール属はほとんど絶滅していました。すでにヴァイオリン属の天下だったのです。

   16世紀半ば、1550年ごろに突如登場したと考えられているヴァイオリンとその仲間、ヴァイオリン属の楽器は、完全に、それ以外の擦弦楽器を駆逐してしまうほど、優秀な性能を持った、そして、21世紀の現代まで通用する、すさまじい発明だったのです。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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