「こども保険」という社会保険
純粋な「保険数理的保険」からの乖離を許容しながら、なおも一定の条件の下での反対給付に基づいて保険料の支払いを説得し、かつ社会全体の効率性を高めることができる、この社会保険という発明は、現代社会になくてはならない一大イノベーションである。我が国の社会保障制度もまた、その根幹にこの社会保険という仕組みをおいていることは、多言を要しないだろう。
この社会保険という仕組みを、子育て関連の事業や給付に用いようという提案が、この3月に自民党の小委員会から出された「こども保険」である。この保険は、「子どもが必要な保育・教育等を受けられないリスクを社会全体で支える」ことを目的とし、厚生年金保険料に付加して労使から徴収する財源を、幼児教育・保育の無償化(児童手当の拡充)や保育所の整備に充当するという。
この提案に対しては、子どもを持たない者からも保険料をとることの是非や、子どもがすでに独立した高齢者から保険料をとることの可否(現行案は現役世代からの徴収を想定)、ひいては税との役割分担など、様々な議論が出ている。こうした指摘に対しては、子どもが幼児教育・保育を受けられないリスクをそのままにすれば、少子化は止まらず、それは社会的な損失であり、そうしたリスクを社会全体で支えあう必要がある、といった線で説明されているようである。