公益財団法人「 韓昌祐・哲文化財団」の支援を受けた「日韓・次世代の障害者グローバルリーダー育成事業」。この事業の一環で、群馬大学の任龍在(イム・ヨンジェ)准教授を中心に開かれた「肢体不自由者の自立と社会参加」のシンポジウムに参加した学生らが、東京大学先端科学技術研究センターの福島智教授を訪ねた。
「絶望のどん底にいました」
福島教授は、視覚と聴覚の両方を失った障害者、つまり「盲ろう者」と呼ばれる。映画「奇跡の人」で有名なヘレン・ケラーは盲ろう者として世界で初めて大学進学を果たしたが、日本では福島智(さとし)氏が第一号。福島教授が驚異的なのは、世界初の常勤の大学教員に就いたことだ。
福島教授は話すことはできる。だが自分の声が聴こえない。当然、相手の声も聴こえず、顔も見えない。隣に座る「指点字」通訳の介助を受けながらの語り合いになった。
福島教授は3歳で右目、9歳で左目を失明。14歳で右耳、18歳で左耳の聴力を失った。
盲ろう者になった経緯を話すと、学生たちは一様に驚きの表情を浮かべた。
「盲ろう者になって、半年間は絶望のどん底にいました」。絶望から救ったのは母親が考え出した指点字だった。相手の6本の指をタイプライターのように打って伝えるコミュニケーション。そこから生きる意味を見出した。
東京都立大学(現・首都大学東京)に入学、同大学院へ進み、みずからの障害と指点字による障害の克服を分析した論文を書き、東京大学の博士号を取得。現在、バリアフリー研究で知られると同時に、世界盲ろう者連盟アジア地域代表などを務める。