大手コンビ二のローソンは2017年7月3日、オフィス内で食品をセルフ販売する設置型オフィス内コンビ二「プチローソン」を、東京都23区内先行でサービス開始したと発表した。
プチローソンは、いわゆるオフィス向け置き菓子サービスで、江崎グリコや森永製菓、ファミリーマートなどが先行展開している。ローソンは交通系電子マネー専用のセルフレジ、高密度・多品目の什器「お菓子BOX」、さらにIT技術を駆使して欠品を極力排除するなど、生産性を極力高めたサービスが売りだ。
7月13日現在の導入企業数はおよそ70か所だが、ローソンによれば3日の発表直後から問い合わせが相次いでおり、早くも導入の順番待ちが発生している。なぜ多くの企業はこのサービスに熱視線を注ぐのか――。J-CASTニュース トレンド編集部は、プチローソンを導入した「ネオマーケティング」(東京都渋谷区)を訪ね、その理由を探った。
導入企業のコストは電気代くらい
スーパーでセルフレジを一度でも体験したことのある人なら、「プチローソン」の操作に迷うことはないだろう。菓子BOXから商品を選び、モニター左横の読み取り機から出ている赤い光(スキャンエリア)にバーコードをかざすと、モニターに商品の金額が表示される。1品ごとに削除ボタンが付いているので、間違ってスキャンしてしまった場合は簡単に取り消せる。内容に間違いがないことを確認したら、電子マネーのタッチ部に手持ちの交通系電子マネーをタッチ。ピピッと鳴ったら会計は終了だ。
記者Iも試しに購入してみたが、有人店舗よりもスピーディに買い物が出来るし、他社のオフィス向け置き菓子サービスのように小銭を用意する必要がなく、とても合理的な仕組みだと感心した。
ローソン 運営本部 運営サポート部でプチローソン担当の天野光博マネジャーによれば、レジ端末はモバイル通信のLTE回線でセンターとつながっている。決済に交通系電子マネーを導入したのは業界初。もちろん24時間いつでも買える。
「現金購入ですとお客様が小銭を持っていないケースもあり得ます。なにより料金回収箱を置くということは現金を無防備にするということ。金融関係ですと『現金は基本的にNG』というところもあり、『こんなサービスを待っていた!』という声を多くいただいています。企業様の負担は電気代以外ありません。導入手数料や契約期間の縛り、撤去費用を請求することもありません。また108円といった価格設定が自由にできることは弊社にとってもメリットです」
ネオマーケティング 管理本部 人事・広報戦略室の統括責任者である萩原健太さんも「電子マネー決済はとても使いやすい」と太鼓判を押す。導入から10日以上経過したが問題は一つも発生していないという。
「最初はみんな興味本位でしたが、操作に困った社員は誰もいませんでした。2軒隣のコンビ二に行かずとも食品を買えるのはとても便利で、夕方や夜の『お腹は空いてきたけれど外に出る時間が惜しい』と感じる時間帯に活用されている印象です」
お菓子BOXにある商品は50~60品目。日持ちのする商品――ガム、素材菓子、スナック菓子、米菓、ナッツ、チョコレート、カップめんを中心に取りそろえる。さらにヘルシー&ビューティー志向の女性を意識した、ナチュラルローソンブランドの商品も置いている。ネオマーケティング社員の男女比率はほぼ半々だが、プチローソン利用者の男女比もそれほど変わらないという。
「おかげさまで当初想定していた売り上げよりも高い数字で推移しています。セルフレジは販売データを逐一チェックできるので、欠品という残念な状況が起きる前に補充するよう気をつけています」(ローソン天野さん)
品目数と在庫量は圧倒的
電子マネー決済以外の差別化ポイントについては、売場であるお菓子BOXの容量も見逃せない。
「他社の置き貸しサービスと比べて、プチローソンの商品点数や在庫量はかなり多いです。お菓子BOXでだいたい7万円くらいの商品を収納できるでしょうか。これは他社の数倍です。選べる楽しみをお客様に感じていただけるのはプチローソンならではと思います」(ローソン天野さん)
とはいってもプチローソンの商品幅は有人店舗よりも狭く、その中で顧客満足度を上げていかなくてはならない。ローソンは、無線セルフレジを開発したブリッジ・モーション・トゥモロー(東京都渋谷区)と週1回のペースで販売会議を行っている。
ところで最近は食品メーカーの商品開発サイクルが早くなっている。ネオマーケティングのプチローソンで予想以上に売れているのはカップめんだが、そのカップめんカテゴリーはネタ系商品が矢継ぎ早に投入されている。
天野さんもその辺は認識しており、「定番商品を7割、新商品を3割くらいの比率にして、普通のコンビ二と同じような展開にすることで、お客様を飽きさせないようにしたい」と意欲を見せる。
プチローソンは標準のお菓子BOXのほか、オプションとして冷蔵庫や冷凍庫、コーヒーマシンも用意している。ネオマーケティングには今のところお菓子BOXのみ設置されているが、萩原さんはオプションにも興味を示していた。
「冷凍庫を導入したら、アイスクリームを1日2個ずつ買う社員はいると思います(笑)。これだけ日本が暑くなってきているので」