留学中、一番楽しかったのは乗馬
二人目の横浜市在住の小川晃生さん(28)は、「肢体不自由者の海外留学と就職活動」を語った。
中学3年の時、運動会の騎馬戦で落下。胸から下の筋肉が麻痺、車椅子生活になった。同じ境遇の障害者支援を志し、筑波大学に入学、同大学院に進んだ。この間、企業の障害者リーダー育成の研修生に選ばれ、米国・アリゾナ大学に9か月間留学した。同大学は障害学生支援で米国のトップレベルにあり、障害者専用ジムもあるという。アリゾナ大学ではウィルチェアーラグビー(車椅子による国際スポーツ)に挑戦した。そして卒業後、大企業への入社を果たした。
「留学中、一番楽しかったことは?」と聞かれ、「乗馬です。日本では『体幹のない障害者は馬に乗れない』が常識ですが、背もたれをつけてもらい乗れました」。そう答えると質問者の目が輝いた。「就職にあたって大切なことは?」という質問に、「面接時にバリアフリーなどの要件をありのままに伝えること」。これには全員がうなずいた。
海外留学も就職も「夢物語」ではない。通訳を務めた群馬大学准教授の任(イム)さんが、日韓の障害者学生を触発した。
若い重度の障害者学生に自立と社会参加のきっかけを与える。交流活動に参加した障害者は悩み考え抜き、1年ほど経つと「私はどうすればいいのでしょうか」と相談にくるという。それを待つことが「楽しみでもあり、やりがいでもある」と流暢な日本語で自立支援への戦略を語った。
(文・ノンフクションライター 村尾国士 写真・菊地健志)