「アメリカ独自音楽の祖」へのオマージュもうかがえる バーバー作「夏の音楽」

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楽しげな木管楽器同士の会話

   そんな彼の、唯一の木管アンサンブルのための室内楽作品が、1956年に完成された「夏の音楽」です。1953年にデトロイト室内楽ソサエティからの依頼で着手された作品です。それ以前の戦時中に書かれて未発表だった作品の要素を一部転用したりして完成させていますが、それ以外にも、冒頭の「遅く、そして気怠く」と書かれた部分には、「アメリカ独自音楽の祖」といもいうべきガーシュウィンの「サマータイム」の精神的影響が見られますし、そのあとの、クラリネットの素早いパッセージなどは、アメリカにわたってきていたロシアの作曲家、ストラヴィンスキーの革命的代表作「春の祭典」の濃厚な影響が聴きとれます。

   中間部は、楽しげな木管楽器同士の会話・・・あたかもぺちゃくちゃおしゃべりをしているようなパッセージ・・・・が展開しますが、最後はまた、冒頭の「遅く、そして気怠く」のシーンに戻って、静かに曲を閉じます。12分ほどの単一楽章の楽曲ですが、初演時より聴衆には好意をもって受け入れられ、現在では、木管五重奏の重要なレパートリーとなっています。21世紀の我々からすると、「20世紀のちょっとクラシカルな」かわいらしい夏の小品です。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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