近視や目にまつわる科学的に証明された治療法や予防法の開発に取り組む「近視研究会」は、2017年7月5日、都内で「こどもの眼の成長を考えた夏休みの過ごし方セミナー」を開催した。
その中で、日本の小学生の視力の現状、近視のメカニズム、近視発症率抑制の研究結果が伝えられた。
注目のバイオレットライトとは?
慶應義塾大学医学部眼科学教室教授の坪田一男氏によると、「近視の人口は日本でも増加し続け、小学生の約3人に1人が、視力0.1以下」だという。
「近視の原因のひとつとして、眼軸長が伸びることがあげられます。特に成長期に体の発達とともに眼軸長のバランスが壊れ近視になるケースが多いとされていますが、その因子には『遺伝』と『環境』の2つが影響しています」
その「環境因子」のひとつが、外遊びの減少だ。
ベネッセが2014年に発表した、「第2回 放課後の生活時間調査-子どもたちの時間の使い方」によると、1日のうち、遊びやスポーツなどで屋外にいる時間は、小学生は40分、中学生は20分、高校生は10分だった。小学生の3割、中学生の7割、高校生の8割は、屋外で全く遊びやスポーツをしていない、という結果も出ている。
これについて、坪田氏は、「屋外活動時間が長いと近視発症率が抑制されることが分かっています」と話す。
「両親が近視で屋外活動が短い子ども」と「両親が近視でも屋外活動が長い子ども」を機比較した結果、屋外活動が長い子どものほうが近視発症率が低かったという研究報告がある、という。
大事なのは、「波長360~400nmの可視光であるバイオレットライト」だ。
バイオレットライトとは、可視光の最下限、紫外線の手前に位置する可視光での最も波長の短い紫色の光のこと。最新研究によると、このバイオレットライトが近視進行抑制に関与していることがわかってきた。
ただ、バイオレットライトは家庭や学校やオフィスにはほとんど存在していない。そのため、太陽光の当たる屋外で過ごすことが近視抑制には重要なのだ。
「1日2時間だけで大丈夫です。朝の涼しい時間を活用して、屋外活動をしましょう。日差しが入る時間帯にはできるだけ窓を開けて、自然光を取入れましょう。日陰でもOKです」と、坪田氏は、訴える。
夏季の直射日光は熱中症や肌へのダメージもあるので、帽子をかぶる、日陰を選ぶなどして、屋外での活動を一定時間とりたい。