音の最初を強めに出す日本
実は江戸時代以前の日本古来の音楽・・・現在ではそれを「純邦楽」と「純」を付けて呼ばなければいけないのは情けない・・と関係者が言っておりましたが、筝曲でも三味線でも、尺八でも、比較的「最初の音」を聞かせ、かつ、シンプルなメロディーを味わう傾向にあります。それに対して、ヨーロッパの音楽は、特にクラシックは、最初の打音だけでなく、そのあとに響く音を味わい、さらに、その響きをいくつか重ねて「和音」を楽しむという考え方のもと楽器も改良され、発展してきました。
低湿度のヨーロッパは石の家が多く、高湿度でも住みやすくするために伝統的な日本家屋は木造建築が多くなっています。これも、「後ろの音を響かす」環境のヨーロッパの教会建築と、「音がすぐ拡散・吸音されてしまうので、音の最初を強めに出す」とした日本音楽の違いに現れているような気がします。
もちろん、音の聞こえ方は個人差も、そして同じ個人でも年齢によって違いますし、現代のクラシック音楽などは、ほとんど空調の利いたホール内で演奏されるので、こういった屋外環境は現在では直接影響しませんが、長年、人々が、「これならもっといい音楽ができるのではないか」と考えてきた音楽の発展の歴史に、その土地の湿度環境が大きく影響しているであろうことは、これは、間違いないことのように思われます。
本田聖嗣