経験者が教える、若手職員にぜひ知ってほしいこと
評者自身30年間、働いてきてわかったことがある。
若い頃、真剣に悩んでいたことも、職位が上がって振り返ってみると、なぜ、そんなことであれほど深刻に悩んでいたのか、と思うことだ。
著者も、本書のまえがきで、同様の経験を記している。
「本人にとって『大事件』であっても、経験者から見ると、案外簡単なことで悩んでいる場合が多いのです。私たちは、『人類史上初の大事件』には、そうたびたびは出会いません」
「上司として、部下がつまらないことで悩んでいるのを知りました。そしてある段階で気付きました、『な~んだ、みんな同じようなことで悩んでいるんだ』と」
本書において、著者は繰り返し「一人で悩むな、抱えるな」と強調している。悩んだときの特効薬は相談すること、常備薬は友人や先輩だというのだ。
「自分の考えた案に自信が持てないときや、どちらに進んでよいか分からないときは、じっと一人で悩まずに、上司や先輩に聞いて回ることにしていました」
「私たちの仕事は、これまでにないことを発見するようなことではありません。国民や住民を相手にした問題です。しょせん人間がやることですから、たいがいは『前にも、よく似た例があったよなあ。あのときは......』となります。山よりでっかい獅子は出ないのです」
アレコレと思い悩んで、メンタルな問題でダウンしてしまうのは残念だし、そもそも、経験と知識に限りがある若手が思いつく範囲のアプローチでは、既存ルールで解決のつかない課題への対応は、なかなか難しいだろう。
自分なりに一生懸命、調べ、考えたのであれば、その案を持って、さっさと職場の先輩に相談してみることだ。方向性は合っているか、他に選択肢はないか、もっと調べることはないかなどを教えてもらうことが、自分のためであると同時に、組織にとっても、手戻りなく、効率的に仕事を進めることになる。