1966年6月29日、ビートルズが初めて日本に上陸した。飛行機のタラップから法被を着て降りて来たのは驚いた。公演は日本武道館で3日間開催され、全国から熱狂的なファンが詰めかけ、ロックコンサートを超えた社会的現象になった。それから半世紀。改めて「あなたにとって、ビートルズとは何か」――今回は新事実や当時の時代、いまも変わらぬ魅力などについて紹介したい。
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証言や資料で塗り替えられるビートルズ史
これまで語り継がれてきた「ビートルズ神話」を覆す新しいビートルズの歴史だ。『ザ・ビートルズ史 上』(著・マーク・ルイソン、訳・吉野由樹、山川真理、松田ようこ、河出書房新社、5292円)は、発掘された関係者たちへの聞き取り調査や利用し得るすべての一次資料を検証し、4人のルーツからサウンドの完成までを描き直した。
前史の「リバプールの我が家で」の少年期までと1年目の1958年「一緒になることを考える―俺たちはどこへ行くんだい、ジョニー」、2年目の59年「3人のイカした奴ら―乱暴なテディ・ボーイのような存在」、3年目の60年「適性と、自信と、継続性と―幕は切って落とされた」と年代に追っていく。
著者のマーク・ルイソン氏は1958年、ロンドン生まれ。BBCを経てビートルズ研究の第一人者。『ザ・ビートルズ史 下』も発売されており、ともに800ページを超える大著だ。
武道館コンサートを成功させた男
ビートルズの日本公演を実現させたのが「伝説のプロモーター」といわれる永島達司だ。『ビートルズを呼んだ男』(著・野地秩嘉、小学館、724円)は、その永島の生涯を追ったノンフィクションである。
「彼みたいな男が本当の日本人だ」「タツのためならいくらでも質問に答えよう」。永島のことをそう語ったのはポール・マッカートニー。ビートルズだけでなく、ナット・キングコール、ルイ・アームストロング、ボブ・ディラン、カーペンターズ、イーグルス、マドンナ、マイケル・ジャクソンと超一流のミュージシャンの来日公演を次々に成功させた。
米軍回りのバンドのマネージメントから始め、現在の「キョードー東京」を設立、1999年に73歳で死去。ノンフィクション作家の野地秩嘉氏の徹底取材で、戦後の芸能事情やビートルズ来日秘話など興味深い作品となっている。
ビートルズの音楽的マジックを解明する
ビートルズに関する本は様々あるが、『真実のビートルズ・サウンド完全版 全213曲の音楽的マジックを解明』(著・川瀬泰雄、リットーミュージック、2160円)は、サウンドや楽器の演奏の仕方を解き明かすという1冊だ。ビートルズの公式楽曲213曲にまつわる「WHY」と「HOW」を解明、レコーディング現場で立ち会っているかのように、ビートルズの音楽的マジックが明らかにされていく――。
著者の川瀬泰雄さんは、山口百恵のプロデュサーとして有名だがビートルズ研究家としても知られ、2008年に『真実のビートルズ・サウンド』という新書を書いている。本書はその「完全版」である。
著者自身がギタリストなので、ギターの弾き方には力が入っている。あのフレーズはこう弾いていたのかと、目から鱗が落ちる箇所がたくさんあるに違いない。CD を聴きながら「歌って弾いて確かめてほしい」といっている。