視覚障がい者の評価は
鈴木さんの説明に続いて、ドイツ発祥の体感型ワークショップ「NPO法人Dialog in the Dark Japan(ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン)」のスタッフである桧山晃さんがデモンストレーションを行った。
生まれつき目が見えない桧山さん。しかし日頃からiPhoneを使いこなしており、コンピューターに対するアレルギーはない。鈴木さんのサポートを受けながら、桧山さんはノートパソコンで「聞こえる選挙」にアクセスする。自らカーソルキーを操作してページ内のテキストを選ぶと――、ソフトがすごい速さで読み上げていく。健常者であるJ-CASTニュース トレンドの記者Iは聞き取るのがやっとだった。対照的に桧山さんは「これでも遅いくらい」と余裕の表情でつぶやく。目が見えないことで、聴覚が研ぎすまされているからだろうか。
実はサイト情報をテキスト化するだけでは、耳で情報を集める人にとって親切になったとは必ずしもいえない。タグ付けがおかしかったり、適切な見出しが付けられていなかったり、文書の構成が論理的でなかったり、画像の代替テキストがいい加減だったりすると、スクリーンリーダー利用者は内容の理解に苦労させられる。つまり、発信する側の「伝える基本」がしっかりしていないといけない。「聞こえる選挙」の制作にあたっては、視覚障がい者や専門家、支援団体の意見を取り入れることで、アクセシビリティ(利用しやすさ)に配慮している。
桧山さんはデモンストレーション終了後、「ほしい情報にすぐにアクセスできて、使いやすいと感じました」と満足げに感想を述べた。
ちなみに健常者が「聞こえる選挙」を開くと、視覚障がい者が普段どのような現実に直面し、そしてスクリーンリーダーでどんな合成音を聞いているか、疑似体験できる仕組みが用意されている。興味をもった人は一度チェックを。
ヤフーが視覚障がい者34人に実施した「選挙情報の取得に関するアンケート」によれば、6割以上が投票に積極的で(図表1)、今回の都議選について9割が投票の意向を示している(図表2)。一方、これまで投票に積極的でなかった人にその理由を聞くと、「選挙立候補者の情報がないので、投票意欲がわかない」「選挙に関する情報を簡単に調べられるサイトがない」といった声が寄せられた。
同社の取り組みはまだ始まったばかりだが、選挙に関する情報提供のあり方に一石を投じるか。