再生するには熱狂するリーダーの存在が不可欠
一方、個別に見れば、とても勇気づけられる取り組みは既になされている。そこは、大隈半島の中央に位置する鹿児島県鹿屋市串良町柳谷地区。いわゆる「やねだん」とよばれる集落である。補助金に頼らず、サツマイモ、焼酎、唐辛子を世界で売り、自主財源で稼ぐ。このシンプルなやり方で、人口300人の限界集落から「奇跡」が起こった。今ではIターン、Uターンが殺到しているという。
この集落のリーダー、公民館館長豊重哲郎氏(76歳)の20年間の闘いとその軌跡を辿る、優れた1冊が、「日本への遺言、地域再生の神様<豊重哲郎>が起した奇跡」(幻冬舎 2017年5月)である。著者の出町譲氏の、ベストセラー「清貧と復興」(文藝春秋)から5冊目の本だ。出町氏は、「地域にしても企業にしても、再生するには熱狂するリーダーの存在が不可欠だと思っています。」という。
それに対する反面教師は、目下、東芝ということになろう。
「東芝消滅」(今沢真著 2017年3月 毎日新聞出版)は、史上空前の規模の巨額損失を発表した「名門」東芝について、毎日新聞の経済プレミア(毎日新聞が運営するビジネス情報中心のニュースサイト)での連載「東芝問題レポート」をもとに出版された3冊目の本だ。ベストセラー「東芝 不正会計 底なしの闇」、「東芝 終わりなき危機『名門』没落の代償」も併せて読めば、リーダーシップやガバナンスの問題を無視することはできない。「バラ色の世界」にしがみつき、いまだに「有事」にあることを冷静に自己認識できないで喘ぐ名門企業の行く末をしっかり注視していきたい。
経済官庁 AK