スウェーデン音楽界に差し込んだ夏の太陽の光
19世紀後半から20世紀初頭にかけては、19世紀前半にドイツで起こった「ロマン派音楽」の影響の後、周辺の各国で地元の民謡や舞曲のリズムを生かした「国民楽派」と呼ばれるようになる作曲家たちが次々に現れて「自国のクラシック音楽」を確立した時期となります。北欧でも、ノルウェーのグリーグ(1843年生まれ)、フィンランドのシベリウス(1865年生まれ)などが活躍しますが、彼らから少し下の世代であるアルヴェーンも、いかにも北欧らしい「夏至」をテーマにしたこの曲などを作曲することによって、スウェーデンを代表する「国民楽派」の作曲家とみなされるようになります。
アルヴェーンの作品はこの曲を含め、20世紀に入ってから作曲されたものも多く、すでに「先進国」ドイツやオーストリアでは、調性も崩壊し、いわゆる「現代曲」がもてはやされるようになっていましたので、時代遅れ、ともとらえられかねない作風でしたが、さらに時代が下った今日から見ると、その素朴な美しさは後期ロマン派としてふさわしい作品たちで、アルヴェーンは近代スウェーデンを代表する作曲家として評価されています。
スウェーデン狂詩曲 第1番「夏至の徹夜祭」は文字通り、スウェーデン音楽界に差し込んだ夏の太陽の光だったのかもしれません。
本田聖嗣