少子高齢化は、経済を成長に転じるチャンス
欧州の福祉国家ほどではないが、我が国でも同様の政策はあり、遅かれ早かれ筆者が提唱するトリレンマに陥ることも十分考えられる。我が国の少子高齢化は人口が減少に転じるところまで来ており、経済活動の維持の観点からも一定程度の移民の受入れは必要だろう。
しかしながら、筆者は、日本のかつての高度成長期を挙げ、現在の少子高齢化は、当時と同様に経済を成長に転じるチャンスと説く。すなわち、高度成長期に日本は人手不足の状態にあったが、同時期の欧州と異なり、移民に頼らず(当時の国際情勢に照らして受け入れられなかったこともある)、技術開発や人材育成を通じた生産性の向上でこれを乗り切ってきたというのである。
折しも政府は、先週「未来投資戦略」や「骨太の方針」を閣議決定したが、未来投資戦略の中心は技術革新を通じたスマート社会(Society 5.0)の実現であり、骨太の方針でも人材育成に相当の記述が割かれている。当時と状況が異なるところもあるが、「人手不足」だからといって(たしかに失業率は低い)安易に外国人に頼るだけではなく、自動車の自動走行をはじめ、我が国が技術立国として競争力を取り戻すという選択肢もあるのではないかと思い直した一冊である。
銀ベイビー(経済官庁・Ⅰ種)