全体を通しても4分台という短い組曲
そんなバルトークが28歳の時、トランシルヴァニアの地で出会った民謡。それをもとに34歳の時に書き上げたのが「ルーマニア民族舞曲」です。ハンガリーの作曲家が隣国の民俗舞曲に興味を持った・・・わけではなく、当時、トランシルヴァニアはハンガリー王国領だったのです。第一次大戦の結果、現在までルーマニア領となっています。
「ルーマニア民族舞曲」は、6曲からなり、それぞれ「棒踊り」「飾り帯の踊り」「足踏み踊り」「プチュム人の踊り」「ルーマニア風ポルカ」「速い踊り」と題名がつけられています。
曲は6曲もあるのですが、それぞれの曲がとても短いので、全体を通しても4分台という大変短い組曲で、そのためか、バルトーク自身のピアノ演奏会においても、他の演奏家の演奏会においてももっとも取り上げられるレパートリーとなっており、人気の高まりのおかげか、バルトーク自身が1915年にオーケストラ用に編曲しています。
そのほか、たくさんの作曲家が独奏楽器とピアノのデュオ版などにも編曲したため、現在では、バルトークの代表曲の一つとして、演奏会で取り上げられることも多い曲になっています。
コンパクトな中にも、エキゾチックさを感じさせるトランシルヴァニア民謡が聞こえてくる・・音楽によって、遠いバルカン諸国の世界を旅したかのような気分が味わえる、近代ピアノの小規模作品の傑作です。
本田聖嗣