EDBは進出企業にとって「パートナーであり仲人」
IoTはいくつものレイヤー階層に分かれ、しかもカテゴリーによって構造が異なる。すべてを自前でそろえられる企業はなく、「協業」がキーワードになる。
シンガポールが抜きん出ているのは、EDBの支援が手厚いことだ。技術開発・テストを共同で行うだけでなく、他企業との接点づくりをお膳立てする仲人のような仕事をしている。しかも汚職を許さないクリーンな行政と知的財産を保護する法制度が整う。こうした取り組みは世界中のビジネスマンに高く評価され、多くの多国籍企業が産業用IoTの投資国に選んだ。例えば、生産設備制御の横河電機やビル制御のジョンソンコントロールなど、IoT関連技術を持つ企業が同国に進出している。
横河電機は、シンガポールのジュロン島にある加工工場の生産性向上を目的に、取引先やIT・企業と協力してオートメーションにビッグデータを活用するための技術開発を行っている。16年に同社の子会社が開業したCo-Innovationセンターは、シンガポールで最大の電力会社グループと共同で、人材と設備の信頼性向上のためのイノベーションに取り組む。同センターは産業用IoTの活用を拡大するため、マイクロソフト、FogHorn Systems、Bayshore Networks、そしてTelit Iot Platformsとも協働している。
1980年代からシンガポールで石油化学コンビナートを操業している住友化学は2016年11月、EDBの支援を受け、同国で産業用IoTプロジェクトを開始したことを発表した。多国籍企業のアクセンチュアと協力して、プラント関連業務のデジタル化、グローバルサプライチェーン情報の可視化・高度化およびクラウドソーシングや最新テクノロジーの積極活用など、化学業界における先進的な取り組みに挑戦している。