なぜAppleやFacebookは大企業になり得たのか 経営の「本質」を説く

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新卒社員が退職するのは「うれしい悲鳴」

   先日、国立公文書館を訪れ、昭和21年、帝国議会の議論に触れる機会があった。平和主義に立脚しようと、憲法を大胆に改正しようとする熱に胸をうたれた。それから70年。

   懸命に働き、世界から3000万人もが観光に訪れる豊かな国となった。そのかたわら、精神の豊かさを求めて、中山間地や漁村に移住する人、社会貢献、地球貢献に進路を定める人が増えている。他人の幸せに貢献するという価値。そのことが自らの幸福だという認識が、SNSとともに拡散し始めている。いま、大企業に就職した新卒社員の10~30%が数年で退職するという。一度きりの人生をなにかに傾けようとする、うれしい悲鳴と言えるかもしれない。

   地域の未来についても、飛騨高山や直島に多くの訪問者があるように、風土、食べ物、生活文化すべてが資源となる。そこで谷口氏は、「SNSはその魅力を伝える媒体であるが、やはり最強の媒体は、都市そのもの」だと。

   経済と経営の担い手は私たちひとりひとりであり、人生を傾ける情熱にあふれるビジネスに、女神が微笑むと、筆者は問いかける。SNSの動画とメッセージを世界が共有する時代に、自らの個性が文化だと胸をはれば、それがビジネスにつながる、という著者からのメッセージ。中央省庁ではたらく私たちを含めて、これからを担う世代を大いに勇気づけるのではないか。

   社会の善、他人に貢献するよろこびを日常生活に求めようとする世代。そうした世代が、世界の仲間たちと新たな価値観や哲学を共感し、専門知識や実務能力を養い、世界に発揮するようになれば、日本が新しい光を放つ、と期待したい。

(経済官庁 YK)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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