沿線で獲れる食材を活かした料理を列車内で
19年春から運行を開始する新型観光列車は、県内を縦断する天神大牟田線を走る予定だ。運行区間は未定ながら、期待は高まる。
というのも、県内を縦断する天神大牟田線は、福岡・久留米・柳川・大牟田の4都市を結ぶ、西鉄のドル箱路線だ。通勤・通学路線のカラーが強い一方、太宰府天満宮や九州国立博物館、水郷柳川といった観光スポットを抱える。
とくに柳川は訪日外国人旅行客が爆発的に増えており、伸び代がある。食に目を向けると、九州一の穀倉地帯である筑紫平野は農業が盛んで、小麦やイチゴ、キウイフルーツは全国2位の生産高を誇り、筑後川沿いには蔵元が集まる。
新型観光列車のコンセプトは「LOCAL to TRAIN ~街を繋いできたレールは人をつなぐ時代~」。つまり、上記に挙げた地元の名産が、車両にふんだんに使われると予想されるのだ。
すでに決まっていることもある。デザイン担当はランドスケーププロダクツ(東京都渋谷区)の中原慎一郎さん。プロデュースは、飲食などのオペレーション事業、ブランディングプロデュース事業に取り組むトランジットジェネラルオフィス(東京都港区)が担当する。トランジットジェネラルオフィスが手がけたJR八戸線(八戸駅~久慈駅間)の観光列車「東北エモーション」は、運行開始から3年経った現在も予約困難な状態が続いているという。
東北エモーション同様に、西鉄の観光列車もローカルの魅力を取り入れる。沿線風景をゆっくり楽しんでもらいながら、沿線で獲れる食材を活かした料理を列車内で提供する。料理は著名料理研究家や人気店のシェフが監修する予定だ。
メインターゲットは福岡都市圏や沿線住民および観光客。第2部に登壇した西鉄上席執行役員の藤田浩展事業創造本部長は「30代~50代の女性の比率が高いと思います」と想定イメージを語った。地元の人に沿線の魅力を知ってもらうべく、利用しやすい値段に設定するという。
ところで、天神大牟田線の雑餉隈駅付近~下大利駅付近(約5.1km)は立体交差事業が行われており、高架化に合わせて駅周辺の再開発も進行中。福岡都市圏は今後も人口増が見込まれるのに対し、工業都市の久留米や大牟田は一時期ほどの活気はない。田園地帯は多彩な農産品が自慢だが――。福岡市だけでなく沿線南部にも目を向けてもらうことで、地域全体を活性化する願いが、観光列車に込められている。