私もこうして「うつ」を抜けました 身も心も軽くなる「うつ病脱出」コミック

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厄介な「突然リターン」とどう付き合うか?

   うつトンネルを抜けたと思っても、しばらくして、次のトンネルに入ってしまうことも多い。何の前ぶれもなく、ある日いきなり「うつ」がぶり返す状況を、著者は「突然リターン」と呼ぶ。

「一度『うつ』を患ってしまうと、心に『うつスイッチ』ができて、『うつ』に戻ったり、また抜けたりということをくり返しやすくなります」
「このスイッチとうまくつきあっていくことも『うつヌケ』なんだと思うんですよ」

   著者の場合、突然リターンが、「はげしい気温差」をきっかけに起こることを知る。からくりがわかったことで、一気に霧が晴れたという。ちょうど「目的も正体もわからない『幽霊』が性質や目的がはっきりした『妖怪』だということがわかった・・・みたいな感じ」だったそうだ。

   著者がツイッターで情報を集めてみると、突然リターンには、人それぞれ様々な「引き金」があることがわかったという。

・台風が近づくと「うつ」が来るなど気圧の低下
・ホルモンバランス
・胃の調子
・血行

など。

   「引き金」がわかったとしても、突然リターンは避けられない。結局「うつ」が来たら、仕事がはかどらなくなることには変わりがなく、うつに苦しむ人々は、「時間のロス」感覚に苦しむことになる。

   こうした悩みに対し、本書に登場する専門医(ゆうきゆう氏)は、こう指摘する。

「気持ちはわかりますが、『うつ』のせいで仕事の生産性が低下した――という考え方はしない方がいいですよ」
「気分が落ちた時、それは『人生の自習時間』なんだと考えて、自習時間にふさわしい『やるべきこと』を見つけておくんです」

   この専門医自身は、気持ちがダウンしてきたときは、無駄な抵抗はやめて読書することにしているという。

   面白いことに、うつの再発は、若くてエネルギーのある人ほど起こりやすく、加齢とともに落ち着いてくるという。そもそも「リストカットする若い女性はいるけれど、お婆さんにはいない」というのだ。

   うつ経験者の体験からわかることは、うつトンネルは、すっきりと抜け切って、「もう治った」と安心し切るようなものではない。時々、突然リターンがやって来ることもある。しかし、「引き金」は何かを知り、対処方法を体得していくことで、飼い慣らしていけるようだ。

   どうしても、早くこの苦しさから解放されたいと焦る気持ちが先走りがちとなるが、経験者たちが語るように、

「時間を経ることが『薬』になる。つらいのは今だけ。時が経てば、そのうち『いい人生だ』『楽な人生だ』って思える日が来る」
「毎日ほんの少しづつ治っていくものなので実感しにくいけど、ある日ふりむくと、ずいぶんとよくなってた――」

と気付く日が来るのだ。

   著者の一念どおり、ひとりでも多くの者が、本書を手に取ることで、その心が軽くなることを心から期待したい。

JOJO(厚生労働省)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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