思い切り真っ向勝負に出る
約束の時間がちょうど夕食時だったため、A子さんは「せっかくだから、食事しませんか?」と誘ってくれた。しかもこの後は直帰だからとワインもオーダー。
ぐっと距離が縮まった感じに「これは脈があるかも」と期待しはじめたヒロキさんは、打ち合わせのあとA子さんにそれとなく独り身をアビール。「一人暮らしが長いし、メシを食うのも男の同期とばかりで。こんな晩メシはスーパースペシャルです」。
するとA子さんも「実は私も最近は人事部の同僚や上司とばかり。これじゃいけないと思ってるんですけど、忙しくてなかなか...」。つき合っている男がいない、という意味なのか? 気が大きくなったヒロキさんは、「じゃあこれから時々、美味しいご飯に誘ってもいいですか?」と真っ向勝負に出た。
「ぜひ! 部署外の方に誘ってもらったのは久しぶりなんです」
驚くほどウェルカムな返事に、逆にびっくり。聞けばA子さんは入社からずっと人事一筋。周りは年配の上司と女性の同僚ばかりで、同期の男子からは「ヘタな誘い方をすると、人事部長に筒抜け」と敬遠されてしまうのだとか。考えることはみんな同じ。
「つまり、遊びっぽいつきあいは絶対NGっていうことですよね。それなら最初から、真剣勝負で行こうと...、最初に会った時、彼女と結婚したい! と思ったし僕も三十路目前だったからもう落ち着きたい気持ちだし、こんな天然美人が、30歳まで1人でいてくれたことがそもそも奇跡」
そう思ったヒロキさんは、予告通り「結婚を前提に」ときちんと告白し、A子さんとつき合い始めた。翌年、そろそろ式のことを考えようか、という時期になって、予想もしなかったアクシデントに見舞われた。
A子さんは「結婚式なんかやりたくない」とキッパリ。
理由を聞くと「結婚は2人が納得すればいい。周りの人には関係ない」。どうやら社員の式の主賓序列の面倒臭さなどを目の当たりにし、「式は要らない」派になったらしい。ヒロキさんの両親からは「人並みにやってほしい」と説得されるも、断固としてゆずらず。さらにハネムーンも「そんなことにお金をかけるなら部屋を住み心地よくするのに使いたい」。
必死の説得にもA子さんのポリシーは曲がらず、両親との板バサミに。それも恋の情熱で乗り切り、やっと入籍して新居暮らしを始めた...のだが。「異性との2人飲みは絶対NG」と言うくせに、自分は「先輩との飲みも仕事のうち」と禁を破ったり、七面倒な夕食レシピを深夜2時間かけて作り、寝ていたヒロキさんを起こして完食を要求したりと、次々に驚きの「A子マナー」を打ち出すA子さんに、ヒロキさんはもっか融合政策をネゴする日々だ。
さて、今回の「モテの法則」のポイントは社内結婚の中でも難敵の「人事部」。あなたの収入、査定情報は全部握られているから、ハッタリやごまかしは一切、きかない。仮に彼女とトラブルでも起こそうものなら職場のポジションさえ危うくなるかも! 鬼門をくぐり抜けるポイントは?
1 )あなたが職場でイケてるかどうかが第一関門。
職場での噂は、あっという間に人事部へ。金に汚い、女遊びが酷い、トラブルメーカー、などの噂がたてば、人事部美女への恋はほぼ絶望的。ヒロキさんのようにモテ要素は薄くても仕事のセンスが良くてきちんと実績を出し、人間的に好かれる性格ならなんとかなる!
2)人事は企業の中でも待遇や査定に直結するセクションなので、不倫やフタマタ、1回ヤリ逃げなどグレーゾーンの恋愛は危険すぎ。つき合うなら結婚前提のマジメな関係しかない。特に相手が婚期を意識しているアラサー、アラフォーのキャリア女子なら、やった瞬間に結婚を切り出すぐらいでちょうどいい。
3)人事美女はメンタルが強く、都合の悪い女である。だからあなたは譲れることは譲り、「都合のいい男」になれ。
つまり「A子マナー」のような持論が発動した時は天然のようで確信犯。決してぶつからず、まずはじっくり耳を傾ける懐の広さが必要。
もしあなたが会社員としてはデキるヤツでも、時には「ついていく」くらいの潔さで彼女の直感力を尊重してあげるのが、人事美女にモテる一番のポイント。リードするなんて面倒くさい、彼女のペースにあわせたほうがずっと気楽というあなたなら、この際、人事美女に真正面から「査定」されてみてはいかが?
(ライター・豊田いつき)