【タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」】
「前髪切りすぎた」という曲をご存知だろうか。
歌っているのは、関西の服飾専門学校時代に雑誌の「読者モデル」で人気になった三戸なつめ。2017年4月26日に発売になった彼女のファーストアルバム「なつめろ」の一曲目。彼女のデビューシングルでもあった。
近未来的なサウンドと「前髪を切りすぎた」と繰り返される歌詞。「おでこがこんにちは」という人なつっこい表現ともども、これ以上ない自己紹介ソングだった。作詞作曲とプロデユースはPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅで知られる売れっ子、中田ヤスタカである。
女の子がまねしてくれる
「中学生の時に、鏡を見ていて、人と違う何かがしたい、と思って自分で切ってからずっとこの髪型だったんで、ヤスタカさんからこの曲をもらうまでは切りすぎと思ってなかったんです。でも、テレビなんかでも面白がってもらえるし、女の子が真似してくれたりするんで、この髪型にして良かったと思います」
彼女は、筆者が担当しているFM NACK5の「J-POP TALKIN'」(土曜日22時~22時30分)のインタビューで、そう言った。
彼女の話を聞いていて、今更ながら知ったことがあった。「読者モデル」ということについてである。
2000年代の前半に木村カエラがデビューした頃からだろうか。「読者モデル出身」という言葉を目にするようになった。三戸なつめと同じ事務所のきゃりーぱみゅぱみゅもその一人だ。若い女性の間では常識なのだろうが、そういう年代ではない。雑誌の読者がモデルとして登場する。プロのモデルにはない親近感が受けているということなのだろう、と思っていた。ただ、彼女の説明は、こうだった。
「読者モデルの基本は全部自己プロデユースなんです。好きなコーディネイトで発信するんで、衣装は私服。スタイリストもヘヤメイクもつきません。全部自分で考える。だから結構大変です(笑)」
素人の良さ、という程度の話ではない。スタイリストやヘアメイクがあれこれ考えてくれるプロのモデル以上のセンスや個性が問われてくる。彼女の身長は152センチ。それでも「青文字系」雑誌人気ナンバー1の読者モデルになった。雑誌の編集部にすれば、周辺スタッフが要らない分、経費削減にもなる。「だと思います。私たち、低コストな人物(笑)」
読者モデル出身、という人たちは、自己プロデユース能力の高さで、プロのモデルにはない存在感を獲得してきた女性、ということになる。彼女たちが音楽でも成功する例が多いのは、そんな発信力の高さの表れと言って良さそうだ。彼女は、ジャケットのイメージを「オシャレで可愛いんだけど、何コレ?という違和感のあるものにしたかった」と言った。アルバム「なつめろ」は、iTunesのエレクトロニック・アルバム・チャートで1位。好感度ぶりを見せつけていた。