筑摩書房は改憲団体・日本会議の実態に迫った『ドキュメント日本会議』(藤生明著、ちくま新書、本体価格760円+税)を2017年5月9日に発売した。
原点・長崎での綿密な取材
本書は昨年末、朝日新聞東京本社夕刊で連載された「日本会議をたどって」(2シリーズ・19回)をベースに、社会部記者である著者が雑誌「AERA」に在籍していた当時の取材記録をひもとき、また、新たな論考を大幅に加筆し、再編集した最新版日本会議研究だ。
日本会議は2017年5月末、結成20年を迎える。会員約4万人。日本会議国会議員懇談会約290人、同地方議員連盟約1800人。「草の根保守主義」を標榜し、全都道府県に地方本部を置き、約250の地方支部を今日まで築き上げてきた。
この間、日本会議の事務方トップ、椛島有三氏は同事務総長として組織を掌握。また、自らの出身母体である日本協議会・日本青年協議会の仲間たちとともに、常に改憲勢力の中心にあり続けている。運動は多岐にわたり、教育基本法については改正の推進を大々的に繰り広げる一方、国立追悼施設建設や女系天皇、夫婦別姓、外国人地方参政権については実現阻止のための地道な活動を各地で展開、「草の根」運動の司令塔として実績を重ねてきた。
とりわけ、第2次安倍政権の誕生で、日本青年協議会元委員長の衛藤晟一参院議員が首相補佐官に就任したこともあり、椛島氏らの団体は「日本を裏支配するシンジケート」「宗教右翼に牛耳られた日本最大のロビー団体」といった陰謀論めいた取り上げ方さえされるようになっている。
果たして、それは事実なのか。彼らはどこからやって来て、どんな価値観をもち、どのような戦略をもって国政にコミットし、この国をどの方向へ誘導しようとしているのか。
その際、個人や団体が加盟し緩やかな連合体を形作る日本会議と、強い同志性をおび、周囲には閉鎖的にも見える事務総局(日本協議会・日本青年協議会)とを区別する必要があると、筆者は指摘する。
椛島氏らがかつて在籍し、右派学生運動の発火点となった長崎大学に飛び、かつてを知る関係者への丹念な取材を重ねるとともに、彼らが影響を受けた新宗教「生長の家」創始者、谷口雅春氏や、三島由紀夫氏、神道の理論的指導者だった葦津珍彦氏をめぐるあまたの文献、椛島氏らの膨大な活動記録を読み込み、日本会議の実像に迫った一冊である。