大橋卓弥、かりゆし58、玉置浩二...
みんなが懺悔し感謝した

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ワンテーマで15曲を聴く

   もうお分かりかもしれない。

   それらの曲の二つ目の共通点は「懺悔」と「感謝」である。男の子にとっての母親。反抗する、言うことを聞かない、それがどういうことだったのか。若い頃には、口うるさいとしか思えなかった母親の気持ち。仕事で独り立ちして、家庭を持ち、自分も父親になって初めて分かるようになった時に思う「懺悔」と「感謝」――。

   SEAMOの「MOTHER」のやりとりは具体的だ。朝、起こしてくれと言っておきながら「うるせえ」と怒鳴ってしまった時のこと、学校に行きたくない、と布団を出なかった時に、顔を覆って泣いていた母親のこと、でも、今は「あなたの子供で良かった」と思っていること。最後のオチは胸に迫るだろう。

   かりゆし58は、沖縄在住の4人組ロックバンド。「58」というのは沖縄の大動脈58号線、「かりゆし」は祝い事を、「アンマー」というのは沖縄の言葉で母親を意味している。おもちゃも買えない貧しい中での子育てがどのくらい大変だったか。「ケンカや悪さばかりを繰り返していたロクでもない私」が口にした「決して言ってはいけない言葉」を投げつけた時の対応が逐一歌われている。彼が、自分に娘が生まれた時にどうしたか、それが、その歌のオチになっている。

   その中で一番新しい歌が、2013年に出た玉置浩二の「純情」である。「大バカもので なんのとりえもない」人間にとっての母親の言葉がどのくらい大切なものだったか。「かあちゃん」「おっかちゃん」「おかあさん」と続ける歌の説得力は鳥肌ものだろう。シングルのジャケットは自分の母親と一緒の写真だった。

   そんな風にひとつのテーマで様々な曲を聴けるのは、コンピレーションアルバムという形があってこそだ。今発売中のレコード会社5社共同企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs 5月 東京」のDisk 1「母の歌」には、そんな曲ばかり15曲が集められている。女性の側からは絢香が東京で活動していて行き詰まって実家に帰った時に母親がかけてくれた「おかえり」が歌になった「おかえり」、小柳ルミ子が母をなくした時に歌った「遠い母への子守唄」、さだまさしが書いた、母親の人生を歌った名曲「秋桜」を夏川りみ。彼の曲ではグレープの「無縁坂」なども収められている。

   5月14日は「母の日」。

   それぞれのアーティストの「母に捧げる歌」。

   自分にとっての母親、そんなことを考えてみるきっかけになるアルバムなのではないだろうか。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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