【タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」】
試験問題風に言えば、「次の曲達に共通する点を2つあげよ」ということになるかもしれない。
海援隊「母に捧げるバラード」、小椋佳「木戸をあけて~家出する少年がその母親に捧げる歌」、大橋卓弥「ありがとう」、SEAMO「MOTHER」、かりゆし58「アンマー」、萩原健一「九月朝、母を想い」、玉置浩二「純情」などである。70年代の曲もあれば最近の曲もある。題名を聞いただけでは内容が思い浮かばないものもあるに違いない。
音楽をやった人間が越えたハードル
一つ目の共通点は、すぐに見つかるはずだ。
母親である。様々な形で母親について歌っている。男性のソングライターが、母親をテーマにして書いた曲がそれらである。
シンガーソングライターというのは、自分の身の回りに起こったことや、日々思うことを下地にしながら作品を紡ぐ人たちである。中にはフィクションのような創作性を得意にする人もいたりするものの、多くは個人的な経験を元にしている。
それらの歌も、自分の青春や思春期の母親との関係が反映されている。
音楽をやっている人間の多くが、「親の反対」というハードルを経験している。「勉強もしないで楽器ばかり弾いてないで」とか「音楽で生活出来ると思ってるの」などという小言の洗礼を受けなかった人の方が少ないはずだ。ましてや、地方から上京してきたアーティストがまず超えなければいけなかったのが親だろう。ありていに言ってしまえば「親を泣かせる」ことからその活動が始まっているのかもしれない。そして、そんな母親に対して、自分がどんな仕打ちをしたか、どこかに後ろめたいものとして残っている。
例えば、大橋卓弥の「ありがとう」は、こんな風に歌っている。
「出来が悪くていつも困らせた あなたの涙何度も見た」「素直になれず罵声を浴びせた そんな僕でも愛してくれた」「今になってやっとその言葉の本当の意味にも気づきました」