妥協のない安全性の追求と情報公開で責任を果たす
――社長としてモンサントの強みはどのような点にあると考えますか。
モンサントには大きく2つの強みがあると考えています。ひとつは「遺伝子組換え作物やその他の新製品の充実したポートフォリオ(製品群)」です。農業に限らず医薬などの分野でも、研究開発企業がどれだけのポートフォリオを有しているかは生命線であると考えています。また、モンサントは毎年売り上げの約10%以上を研究開発に投資しており、1つのヒット商品に安住することなく、常に技術革新に挑むモンサントの姿勢を支える原動力ともなっています。
もうひとつは最初にお話しした人材育成などを含めた、モンサントという「組織の強さ」です。モンサントではプロジェクトのゴールは決まっていますが、達成するためのアプローチの方法は現場に任せられています。もちろん組織の同意を得ることは必要ですが、社員が自分で戦略を立案し、行動していきます。何より自分で決めた戦略によってプロジェクトが動くため、責任を持って取り組みます。さらに、戦略を決める際は部署の垣根を越えて自由に議論する体制(マトリックス)も徹底されており、戦略を決めるまでは部署、上司、部下関係なく激しく議論しますが、一旦戦略が決まるとチームが一丸となって協力し合いながら進む速さは私も驚きを感じるほどです。
――食の問題に限らず、日本国内で安全性についての関心が高まっています。日本モンサントとして安全性とどのように向き合っているのでしょうか。
モンサントでは安全性の担保を研究開発の重要な要素であると見なしており、安全性に関するデータを分析するためだけに、米国本社には250人の研究者が在籍しています。さらに得られたデータは別部門の研究者によってクオリティチェックが行われており、自信を持って各国に遺伝子組換え作物の安全性申請をしています。
日本モンサントからも、日本で申請を行う2~3年前から米国側の研究者との話し合いを始め、日本で安全性を認めてもらうために必要なデータがあると判断すれば妥協せずに要求し、そのクオリティもしっかりと精査します。「少しデータに自信が無いけれど、とりあえずこれで出そう」というような甘い判断は決して行いません。常に科学的な根拠に基づき「どのようなデータを揃えれば安全性が担保されたと言えるか」という点では妥協はしません。安全性には大きな自信を持って申請していると自負しています。
――最後に消費者へのメッセージをお願いします。
モンサントは、農業の技術革新によって持続可能な農業の実現に貢献していることに誇りを感じ、日本モンサントもまた、日本の食糧安定供給に関わり、安全性を確保する業務に従事していることに社員全員がやりがいや誇りを感じています。
しかし、研究や技術が優れているというだけでは、企業としての責任を果たしていることにはなりません。今後は、私たちの活動を丁寧にお伝えする必要もあると考えています。「科学的に安全が担保されているのだからいい」という考え方では、消費者の皆様からの信頼は得られません。
私たちの安全に関する情報発信や対話を積み重ねることで、信頼を得ていくことが何より重要であると考えています。
プロフィル
中井秀一(なかい・しゅういち)
農学博士。2001年日本モンサント入社。モンサントが開発した遺伝子組換え作物を日本国内の関係省庁に申請登録する業務に携わるバイオ規制・環境部、同部長を経て2017年4月に取締役社長。実家は稲作を中心とした兼業農家で、4児の父親。