「年をとったら若い人とつきあう」
彼の音楽を初めて耳にしたのは1965年の「恋は赤いバラ」だ。"I LOVE YOU. YES、I DO"と流れるような心地良い英語のフレーズは日本の歌謡曲とは明らかに一線を引いていた。作曲・弾厚作、作詞・岩谷時子、歌・加山雄三。弾厚作というのは、団伊玖磨と山田耕筰をミックスした彼のペンネームだ。1966年の「君といつまでも」のあの「幸せだなあ」という台詞を誰もが一度は耳にしているはずだ。エレキギターを弾いて自作の曲を歌う。シンガーソングライターの走りだった。
しかも戦後を代表する俳優を両親に持つという血統。エレキギターだけでなくピアノも弾く。サーフィンやヨット、スキーやアメリカンフットボールなど日本ではまだ一般的ではなかったスポーツも万能。それでいて、ドカベンというニックネームの飾らない人柄。映画「若大将」シリーズそのもののような存在は当時の若者達の憧れ以外の何者でもなかった。
4月12日、80才記念のアルバムがもう一枚出た。「Respect YUZO KAYAMA」には忌野清志郎、福山雅治、井上陽水、竹中直人、高橋真梨子、森山良子、憂歌団など多彩な顔ぶれは、いかに彼の存在が大きかったかの証明だろう。
2月にThe King All Starsのライブを東京・恵比寿のライブハウス、リキッドルームで見た。客席はオールスタンデイング、1000名ほどの観客の中には初めてライブハウスに足を運んだような年配の姿も見えた。世代を超えた観客から飛ぶ「若大将!」コールの中でギターを抱えて熱唱する姿はまぶしいほどのロックスターだった。
音楽に年齢はない。彼はインタビューの中でこう言った。
「今の若い人の音楽は分からないという人は、分かろうとしてないだけですよ。いい物は良いんです。年を取ったら若い人と付き合うことだね。年齢は関係ありません」
若さの秘訣は、睡眠や食事だけではない。それは好奇心だろう。14才で船を設計した彼は量子力学や天文学、自然エネルギーにも精通している。画家としても玄人はだし。ヨットのある伊豆には「加山雄三ミュージアム」も持っている。山下達郎は彼を「ダ・ヴィンチ」に例えていた。
知りたい、やってみたい、楽しみたい。好奇心のおもむくままに生きること。80才の若大将は、僕らが何を失いかけているかを改めて教えてくれるのではないだろうか。(タケ)