競馬ファンお待ちかねの春のG1がスタート。桜花賞、皐月賞、春の天皇賞と注目のレースが続く。競馬はただ見るだけでなく、勝ち馬を当てるのが魅力だ。
そのためには、知識、研究、情報、対策が必要。今回は競馬をテーマに、誰にも役立つセオリーと実践的なアドバイス、名馬にまつわる歴史や馬を世話する厩務員の暮らしなど競馬と人間のドラマについて紹介する。
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なぜ当たらないのか? と悩む人へ
「競馬の醍醐味は、予想した馬券を的中させることにある」とズバリ語るのが『勝ち馬がわかる競馬の教科書』(著・鈴木和幸、池田書店、1404円)。ビギナーから、なぜ当たらないのかと悩んでいる人たちにもオススメの1冊だ。
競馬記者の経験から、勝つためには膨大なデータが載っている競馬新聞を活用せよというのが持論だ。新聞の選び方から始まり「馬柱の見方」「近走成績の見方」「調教欄の見方」、さらに「パドックの見方」「勝負を分ける馬券の買い方」と具体的な戦略、戦術を解説する。
復習から予習、予想までの「勝ち馬予想のための1週間」という競馬カレンダーの手ほどきもある。まさに競馬の教科書だ。
著者の鈴木和幸さんは大学卒業後、「ダービーニュース社」を経て「日刊ゲンダイ」で活躍、現在は競馬評論家。「競馬の『ビギナーズ・ラック』から競馬にのめり込む人も少なくないが、そうそう当たるものではない。競馬を長く心地よく楽しむための一助になれば」といっている。
サラブレッドの「もしも」の話
「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史も変わっていたであろう」とは、フランスの哲学者、パスカルの有名な言葉だが、『血統史たらればなし』(栗山求、KADOKAWA 、1944円)は、サラブレッドの歴史もちょっとした偶然で大きく変わってしまうという競馬界の「ifの話」だ。
日本にも1998年の天皇賞(秋)で故障し、安楽したサイレンススズカの悲劇がある。「もし種牡馬になっていたら」といまも語り継がれているが、本書は有名、無名の世界の100頭の血統史の短編集だ。
「騎手の飲酒で英三冠を逸したサータットンサイクスの無念」「北米で大種牡馬となった日本が誇るエーピーインディ」「日本への転売話があった凱旋門賞牝馬アーバンシー」「BCマイルよりも受胎率の低さに苦戦したルアー」などなど。運命のいたずらで翻弄された馬たちのエピソードを読むと、人間の人生と重なってくる。
厩務員と馬の笑いと涙の物語
世界でも初めてではないか、というのはコミック『サラブレッドと暮らしています。』(著・田村正一、白泉社、648円)のことだ。現役の厩務員(きゅうむいん)自身が競馬コミックを描くとは珍しい。その著者は田村正一さんで、兵庫県尼崎市の園田競馬場で働いている。
厩務員とは馬の世話をすること。馬のいる厩舎の2階に住んでいるので、職場はほんの10秒。朝早く起きて食事や厩舎の掃除、風呂や散歩、運動など面倒をみる。馬の性格にもいろいろあり、乗ろうとまたがっても、「小内刈りでくずしてからの背負い投げ的な連続技」を仕掛けてくる暴れ者もいた。落馬したり蹴られたりすることもある。それでもレースに勝てば、わが子のことのようにうれしい。
好きだからこその仕事。笑いあり涙ありのリアルな物語だ。