展覧会には二つのパターンがある。有名画家の「目玉」作品で大人数の集客を狙う一般向けと、隠れた名品を並べたコアな美術ファン向けだ。
2017年4月18日から東京都美術館で始まる「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」は、一般向けと、美術通向けの両方の要素を持つ、興味深い展覧会だ。
来日は24年ぶり
一般向けの目玉作品となるのは、ピーテル・ブリューゲル1世(1526年?~69)の歴史的名作「バベルの塔」。教科書などで見たことがある人も多いだろう。
ブリューゲル1世は、現在のオランダやベルギーにあたるネーデルラント(フランドル)地方の画家。息子のブリューゲル2世や、ヤン・ブリューゲルも画家として活躍した。ファミリーで北方ルネサンス美術の一翼を担い、美術史に名を残した画家一族だ。
「バベルの塔」は、天まで伸びる塔をつくろうとした聖書の物語が主題。それまでにも何人かの画家が同じテーマの作品を残しているが、ブリューゲル1世の「バベルの塔」は、構図の大胆さ、塔の迫力、精密な描写のいずれにおいても傑出している。「バベルの塔」といえば、彼の作品を第一にイメージする人が多い。
サイズは59.9センチ×74.6センチ。そう大きくはないが、驚くほど細密で約1400人の人物が描き込まれている。高層建築の木材の足場やクレーン、塔内の教会なども探し出すことができる。気球に乗って俯瞰したかのような、壮大なパノラマ。遠くに地平線ものぞいている。
ロッテルダムのボイマンス美術館の所蔵品で、館外に貸し出されたのは数回しかない。日本では24年ぶりという。