マラソン初挑戦でいきなり日本人歴代4位の記録を出したのは「一般参加」の選手だった。
安藤友香(22=スズキ浜松AC)が2017年3月12日、「名古屋ウィメンズマラソン」に出場し、日本人1位、全体でも2位に入った。シドニー五輪金メダリストの高橋尚子は、安藤のフォームに大きな「素質」を感じている。
リオ銀のキルワ相手に「ここでついていかないと世界で勝負できない」
スタートから最終盤まで、16年リオデジャネイロ五輪銀メダリストのユニスジェプキルイ・キルワ(32、バーレーン)に食らいついた。キルワは2時間21分17秒で優勝したが、安藤は19秒差の2時間21分36秒で2位に入った。野口みずきの2時間19分12秒、渋井陽子の2時間19分41秒、高橋尚子の2時間19分46秒に続く記録を初マラソンで残した安藤だが、レース後は悔しがった。
「キルワ選手と勝負するにはついていくしかなかった。ここでついていかないと世界で勝負できない。でも最後は差をつけられた。まだまだ自分の弱さがあるなと思う」
レースを中継した東海テレビ(フジテレビ系列)の情報では、安藤は入社して最初のあいさつが「私、東京(五輪)で金メダル取ります」だったそうである。また、安藤は全国都道府県対抗駅伝の静岡代表として2015、16年の2年連続で1区区間賞を獲得していた。
「名古屋ウィメンズマラソン」のテレビ中継で解説を務めた高橋は、体の上下動が少なく「忍者走り」と例えられるフォームに驚き、「太ももやお尻、大きな筋肉を使い、上下動が少なく、ピッチを刻む。マラソンの完成形の走りだと思う」「走るフォームがマラソン向きで、(体の)ブレがない。気持ち的にも冷静な判断ができていた」と絶賛。「私よりも素質のある選手」と、将来性に太鼓判を押していた。
8月の世界陸上選手権ロンドン大会の選考レースでもあるこの大会で、選考条件の「日本人1位」と「2時間22分30秒」をともに満たし、代表が内定した。解説の日本陸上競技連盟(陸連)の瀬古利彦・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「すごかった。涙が出てきた。若さが爆発したレース。久しぶりに興奮した」と喜んだ。