「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花主(あるじ)なしとて春を忘るな」。平安時代の「学問の神様」菅原道真が和歌で詠んだように、「梅」は春を象徴するもののひとつ。全国的に有名な茨城県水戸市にある偕楽園をはじめ、全国各地で2月下旬~3月上旬ごろをピークに梅祭りが行われている。今回は、日本で古くから愛される「梅」にまつわる3冊をご紹介。
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日本国内で見られるウメ120品種を紹介するハンディ図鑑
「日本梅の会」会長で、長年に渡ってウメを研究し続けている著者、大坪孝之氏による、初心者向けのウメの品種図鑑『ウメハンドブック』(著・大坪孝之、亀田龍吉、文一総合出版、1512円)。梅園や庭先など身近に植えられている代表的な鑑賞用品種(花ウメ)約120品種を掲載。伝統的なものから枝垂れ、中国品種など幅広く紹介。各品種の特徴をおさえた写真を多数使用し、絵合わせで識別を楽しめる。また、ウメの種類を見分けるときの要点や着眼点のほか、庭先のウメを上手に管理する方法や全国の梅園情報も収録している。ウメの鑑賞がより楽しくなる一冊。
魅力満喫!「目からウロコ」の梅料理本
梅干しを作る...というとむずかしい、手間がかかると思われがち。「完熟梅で作る、一晩水につける、ざるに広げて三日三晩おいて...」といわれると面倒であきらめてしまう人も多い。そんな人におすすめしたいのが、『梅ぢから―びん干し梅干しから梅酢みそまで』(著・藤清光、中山美鈴、農林漁村文化協会、1234円)。
料理人の藤氏と食文化研究家の中山氏が考案する「びん干し梅干し」なら、どんな人でも簡単においしい梅干しが作れるという。ほかにも青梅と味噌、砂糖を一緒に漬けるだけの九州秘伝の万能調味料「梅酢みそ」や青梅の生ジュース、ピクルス漬けといった、思わず試たくなるような梅三昧のレシピが満載。
梅仕事に没頭した40数年の思いを語る
明治時代から続く懐石料理の老舗「懐石 辻留」の店主・辻義一氏の下で働いた著者・乗松祥子氏。百年前の梅干しを譲り受け、現在は梅を扱う会社「延楽梅花堂」を経営している。『百年の梅仕事』(著・乗松祥子、筑摩書房、1836円)では、梅干し作りの名人である乗松氏が、梅の効用、梅干し作りの極意から「辻留流」人の育て方まで、梅にまつわる熱い思いを語り尽くす。
「わたしと梅(梅干し嫌い、コンクリート都市での梅干し作り ほか)」、「生い立ち(子供の頃の手伝い ほか)」、「辻留は学びの場だった(辻留へ、辻留の上京 ほか)」、「辻留以後、味路喜、延楽(市川の生活、京の菓子 ほか)」「梅への決心(梅狂い、土用の太陽が ほか)」の全5章。