リーダーシップ――常にハンズオン、混沌をシンプルなストーリーに還元し、熱く語る
著者自身が社長という立場であることから、本書の視点は、経営者目線であり、その内容もついついリーダーシップ論となるが、やはり30代の若い頃から会社経営者の立場を経験してきたこともあって、興味深い指摘が多い。
「何か異常を感じたとしても、それが本当に問題なのか、ただの思い過ごしなのかは咄嗟にはわからない。何かを感じたら、現場に足を踏み入れる。ハンズオンで現物に触れる。問題の本質が何かを確かめる。周囲の部外者にも意見を聞く。問題がないとわかったら、サッと引き上げる。タッチ・アンド・ゴーで元に戻るのだ。優れた経営者の仕事は毎日、その動作の繰り返しである」
「人は、もつれた糸のような混沌を《自分たちの手に負える大きさ》にまで分解しない限り、中身を理解することはでき」ず、優れたリーダーは、この混沌を徹底的に考え抜き、因果律に分解し、その中でも問題の根源となったものをわかりやすく抽出し、次のセリフを言う。
「この問題って、要するに、こういうことじゃないの」
著者は、この「謎解き」を皆の機先を制して、正確に、そして毎分、毎時、毎日、毎月、毎年、きちんとやっている人を強いリーダーだとする。まだ見えていないことが多い段階で「決定」というより「決断」を下すのだという。
混沌とした状況を誰も見えていないうちから「シンプルなストーリー」に要約し、何をすべきか(戦略、シナリオ、対策)を「熱く」語る、それがリーダーの仕事だというのだ。
「危機感を持ち、クールに問題に切り込もうとするトップは、現場から怖がられることはあっても、好かれることはほとんどない。それがトップの宿命だ」
「トップが自ら《ハンズオン》(現場主義)の経営スタイルをとらない限り、会社を改革したり、組織の危機感を高めたりすることはできない。トップが温かい人気者であり続けることなどないのである」
いやはやリーダーは大変である。