【スポメディア・ウォッチ】
東京マラソンが2017年2月26日、東京都庁~東京駅前行幸通りで行われた。
レースは序盤から、世界記録を上回る2時間2分57秒ペースで進んだ。12年ロンドン五輪の銅メダリストのウィルソン・キプサング(34)(ケニア)ら先頭集団は、1時間1分22秒(世界記録1時間1分45秒)で中間地点を通過し、世界記録を11秒上回るペースで30キロ地点に到達した。
だが終わってみれば、優勝したキプサングのタイムは2時間3分58秒で、世界記録の2時間2分57秒〈デニス・キメット(ケニア)〉には約1分、届かなかった。なぜキプサングは失速してしまったのか。テレビ東京系「SPORTSウォッチャー」が背景を探った。
品川付近でペースが落ちる
東京マラソンは今年、11回目で初のコース変更を行った。東京都の狙いのひとつが、「記録をねらえる高速コース」。マラソンで一番つらいといわれる35キロ過ぎの難所2つを消滅させたのだ。
1つは、隅田川にかかる佃大橋(中央区)。高低差約7メートルに及び、「心臓破りの坂」とも言われた難関だった。もう1つは、レース最終盤の湾岸エリア(江東区)。横から吹く海風に選手は体力を奪われたが、心配の種はもうなくなった。
序盤から、ペースメーカーは世界記録を上回るペースで先導した。先頭集団は世界記録を11秒上回るペースで30キロを通過し、キプサングとチュンバ(ケニア)の一騎打ちとなったが、みるみるうちに失速。30キロ以降で約1分10秒、世界記録との差が広がってしまった。
関係者は「(35キロ前後の)品川付近で思わぬ風が吹いた」。
日本陸連の瀬古利彦長距離・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは世界記録がお預けとなったことに、
「残念ですね。暑かったしね。後半、落ちすぎたね」
と落胆の色を浮かべた。