東京都中央区の築地市場が宙ぶらりんになっている。2016年11月に江東区の豊洲市場に移転する計画だったが、土壌汚染の不安が解消されないため、いまだに先行き不透明だ。なぜ、そんな豊洲を移転先に決めたのか、用地取得に問題はなかったのかと、改めて責任論が出ている。東京都議会は強制力のある百条委員会を設置し、2017年3月に元都知事の石原慎太郎氏らを証人喚問する予定だ。ともあれ、築地市場は今のところ、今の場所でしばらく残る。今回は築地市場をもう一度振り返り、歴史や文化、これまでの役割などについて考えてみたい。
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喰って帰るだけじゃもったいない
いつ頃からか、築地市場がグルメスポットと呼ばれるようになった。大勢の観光客が路地の飲食店に列をなす。「うまい魚を喰って帰るだけじゃもったいねぇ。独特の文化に触れてほしい」。そう呼び掛けているのが、『築地魚河岸 ことばの話 読んで味わう「粋」と「意気」 』(著・生田與克、冨岡一成、大修館書店、1512円)。
著者の生田與克氏は東京・月島の生まれでマグロ仲卸商の三代目。仲卸場内で使われる隠語や河岸の専門用語を解説する。「独特の粋と意気を肌で感じるために押さえたい基本138語」「魚河岸での威勢良いやりとりや、入り組んだ仕組みを正しく理解するための50語」「ガイドブックに載っていないうんちく18話」「仲卸人だからこそ、知っている魚にまつわるエピソード104」と盛りだくさんだ。
マグロの解体ショーは、刑務所への「差し入れ」がはじまり!? 築地では、なぜヒマなことを「芸者の頭」という!?――そんな話も興味深い。