タイムリーな新書が出た。『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新聞出版、2017年2月刊)。著者は奨学金研究の第一人者、大内裕和・中京大教授だ。
単なる学者ではない。「ブラックバイト」の名付け親。このところ熱心に奨学金問題の改善にも取り組んできた人だけに、内容は幅広く、示唆に富んでいる。奨学金問題を考える必読書と言えるだろう。
世代間で認識に大きなギャップ
かつて、「大学は出たけれど」と言われた時代があった。昭和初期の大不況のころだ。せっかく大学を出ても就職先がなかった。
ところが、今も似たようなことが起きている。大学時代に借りた貸与奨学金の総額や利子が莫大な額になり、就職しても返済で四苦八苦するというのだ。
学生は甘えているのではないか。そんな指摘もしばしば起きる。実際、毎日新聞は2017年2月5日、「学費はアルバイトで賄え」という67歳の投書を掲載した。ところがネットにはブーイングの声があふれた。その様子をJ-CASTニュースが8日公開の記事で伝えたところ、あっというまに100近いコメントが付いて、関心の高さをうかがわせた。
大内教授によると、この問題の深刻さについては、世代間で認識に大きなギャップがある。互いに「言葉も通じない」ほどだという。なぜなら半世紀前と今とでは、学生の置かれた状況が全く異なるからだ。