「100年後200年後の人々にまで...」
山中氏の原点となった実験の話には、続きがある。「最初の実験で、予想を立てたのは僕でなく、先生だった。先生の言ったことが真逆だったのだが、ラッキーなことに、その先生がすばらしい人だった。自分の結果が、正反対。普通なら怒り出してもおかしくないが、その先生は僕と一緒に興奮してくれた」。
学問の研究に失敗は付き物だ。「実験の成功率は、平均だと1割以下」と、山中氏は言う。「失敗の時にエンカレッジしてくれる人。そして、成功した時に一緒に喜んでくれる先生。これがないと、研究というのは...」と語り、五神氏に賛同を求めた。
五神氏は修士1年の時、行き詰った実験があったが、無関係の教授の講義をきっかけに、成功した体験がある。「物凄く興奮して結局、そのテーマで博士を取った。今から思うと、完全なビギナーズラック。だけどそれにたまたま出会ったことと、自分自身で思い付いたという興奮がなければ、多分ここにこうしていなかったと思う」
孫氏は「興奮することは物凄く大事なことだと思うし、分かち合う人がいて、うれしくなる」と語り、客席の若者たちに
「皆さんが一番快感を感じるのは、自分自身の身近なものというよりは、もっと多くの、世界中の人々、100年後200年後の人々にまで、感謝され、喜んでもらう。そのときだということを覚えてもらいたい」
と熱弁した。