「住宅過剰社会」では、住宅が「負動産」となる!
著者は、こうした状況を「住宅過剰社会」と規定する。その定義は次の通りだ。
「世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量に作り上げる社会」
著者は憂える。
「人口も世帯数も減少する現代、焼畑的に居住地を拡大してしまうと、限られた人口や開発需要というパイを単に近隣のエリア同士で奪い合うだけにとどまり、全体として見れば、居住地を維持するために必要な税金の支出だけが増大していくという非効率な状況をつくり出してしまっている」
「このまま住宅過剰社会を助長すれば、将来世代に負の遺産となる住宅やまちを押しつけてしまうのです。最も迷惑を被るのは、私たちの子供や孫たちです」
住宅の過剰が進むと、売りたくても買い手がつかない、固定資産税や管理費などを払うだけの「負動産」となる住宅が急増するという。
・新潟県湯沢町で過去、大量に建てられたリゾートマンションが暴落し、10万円でも買い手がいない
・首都圏郊外の開発から40年が経過した住宅団地では、相続人が引き続き居住せず、長期にわたって空き家となり、周辺の木々・植物が覆いかぶさり、「再自然化」し始めた区域があちらこちらに見られる
・挙げ句の果てに、所有者と連絡がとれない、あるいは相続人がいない、わからないといった所有者の不在化・不明化問題すら生じている
著者曰く、「(住宅過剰社会においては)資産としての住宅の有用性が根本から揺らぎ始めており、住宅が資産とされたこれまでの時代とは全く異なるという事実を直視すべき」という。