マルチン・ルターの肖像画も
クラーナハは現在のドイツ東部ヴィッテンベルクを拠点に活躍した。デューラーなどとともに、ドイツ・ルネサンスの画家として知られる。
やはりヴィッテンベルクで、大学教授をしていたマルチン・ルターと親交を結び、彼の肖像画も描いた。世界史の教科書には必ず出てくる作品だ。
ルターは、今からちょうど500年前の1517年、ヴィッテンベルクで、ローマ教会への抗議行動を始めた。これが宗教改革の始まりとされている。有名なルターの『新約聖書』の挿絵も、クラーナハ作だ。
堕落した聖職者、教えの形骸化。ヨーロッパ各地で当時の教会権力に対する反旗と改革の嵐が拡大し、流血の抗争が続いた。クラーナハが繰り返し描いた「ダメ男と、冷徹で毅然とした女」という主題は、「旧教と新教」の暗喩とも読み取れる。