近現代史の副読本に
一般にエコノミストや経済評論家と言われる人は、政府や経済界寄りの発言が多いが、著者は怖いもの知らず。歯に衣着せぬ辛辣な批評で知られる。
日銀・黒田東彦総裁についてはこんな具合だ。
「金融政策で経済の流れを変えることなどできない」という正論を頑として曲げなかったのが白川方明・前総裁。その後任として、「政府のおっしゃることなら、たとえ不可能なことでも気合いでやって見せます」と手を挙げたのが黒田氏だ――。
1949年生まれ。一橋大の大学院を経てジョンズ・ホプキンス大学院で歴史学・経済学の博士課程を修めたあと、ニューヨーク州立大学助教授を経て帰国。外資系の大手金融機関で建設・住宅・不動産のアナリストなどを務めた。トップアナリストとして専門紙でも高い評価を得ていた時期もある。日本と米国のアカデミズムと実体経済の両方を経験し、豊富な歴史知識や文明論をベースにしながら現状分析に踏み込む。ジャズやアニメにも詳しく、広い視野と多彩な切り口で論評する異色のエコノミストだ。
あとがきで、「世界経済における覇権の変遷はけっしてきれいごとではない」「日本でふつうに教えられている近現代世界史が、あまりにも一方的で勝者の立場を正当化する論理で書かれてきたのではないかという不満があった」と書き、「この本は・・・近現代史の副読本としてもお読みいただけるように工夫した」と記している。