なぜ日本でオピオイド鎮痛薬の服用が増えないのか
鈴木教授は厚労省の統計を元にしたグラフ「日本の医療用麻薬の消費量の変化」を取り出し、
「(消費量は)2009年をピークに微減しています。慢性疼痛にも使われるようになり、がん患者は増えているのに、使用量は減っている。まだ必要な患者に届けられていないのは明らかです」
と話した。
その上で、2016年2月の「患者とがん治療医のGAP調査」というアンケート結果に触れて「ドクターの思いと患者の思いがどれだけかみ合っているのか」を説明した。アンケート結果によると、患者に「身体の痛みを経験したら伝えてほしい」と話したつもりだった医師の割合は95.1%だったが、そう聞いた覚えのある患者は38.0%に留まった。「(がんの症状で)身体に痛みが発生することがある」と伝えたつもりだった医師は94.1%、認識していた患者はわずか30.2%だった。
鈴木教授は「こうした患者と医師のコミュニケーション不足が、十分な疼痛コントロールに至らない一因ではないかと思う」と言う。
講演後に設けられた質疑応答で「日本でオピオイド鎮痛薬の服用が増えないのは、医療者側が痛みを我慢させているのか、患者が知らないのか、どちらに原因があるのか」と聞かれると、
「両方にあると言った方がいいと思う。医療者側では、ペインクリニックをはじめ、がんの緩和ケアに関わる医師は理解して積極的に使っているが、それ以外の科の医師はあまり処方していない。もう1つは、子どもたちへの教育だ。医療用麻薬が医薬品として出ており、がんの痛みを抑えるのに必須のものだと全く教育されていないのが現状。麻薬を使うと寿命が縮まるなどと教育されているので、なかなか理解が進まない」
と話した。