九州北部を中心に鉄道やバスを展開する西日本鉄道(通称「西鉄」)は2016年12月7日、西日本鉄道公式YouTubeチャンネルにて、車内マナー向上の啓発動画「空気イス女子高生」の公開を開始した。
座席マナーの見直しを乗客に呼びかけるため「空気イス女子高生」は制作された。タイトルから受ける印象は、存在感の薄い女子高生が「席を詰めてください...」と言い出せずに困っている――といった内容を想像してしまう。ところが本動画の映像は、元気すぎる女子高生2人が目から火花を散らして向き合い、とうとう通路に倒れ込んでしまう、なんともアクロバティックなシーンの連続だ。
ちょっとしたことが他人のイライラを招く
15年に西鉄が行った調査によると、電車内マナーで気になることの第1位は「座席の座り方」だった。そんな座席マナーについて見直すきっかけを作るため、今回の動画は制作された。マナー啓発というと堅くなりがち。まずは気軽に楽しんで見ていただけるように――という思いが込められている。
主役は2人の女子高生。電車内で一つだけ空いた座席をめぐり牽制し合っているうちに、あとから来た女性に席を取られてしまう。彼女たちは目から火花を散らして向き合い、ついに空気イスバトルがスタートする。
苦しい体勢をしつつ伸びをしたり、キレのよいダンスを披露したり、変顔をさらしたり。ほかの乗客が眉をひそめるのも構わず、2人の対決はどんどんヒートアップ。ついには関係のない男性まで巻き込んでの大バトルとなってしまった! しかし、車内に「空席」がなかったわけではないようで...。果たして2人は無事に座ることができるのか、そして車内に平和と笑顔は訪れるのか?
女子高生役を務めたのは、長崎出身の安達葵紬さん(17)と福岡出身の内野七星さん(18)、両者ともモデルとして活動する現役高校生だ。
撮影は10月6日、特別ダイヤを編成し、西鉄天神大牟田線を走行する電車を貸し切って行われた。撮影時間は合計4時間だけ。時間をオーバーすると通常運行の列車に影響が出てしまうため、張りつめた空気の中撮影が進められる。揺れる電車の中での空気イスや、ダンスという体力勝負の撮影だったが、安達さんと内野さんは高い集中力で演技・パフォーマンスを披露。撮影後に脚がプルプルと震えてしまったというほど、過酷なロケだったそうだ。
「一番行儀が悪いのは女子高生じゃない?」という声を挙げたくなる人もいるだろう。確かに行儀はよろしくないこともあるのだが、よく見てほしいのは呆れ顔で2人を見つめる他の乗客のふるまいだ。ひざの上に載せられる荷物をあえて座席に置いたり、大股開きで座ったり――。自分のことは脇に置く「我良し」のふるまいが近くの人のイライラを生むことを、この動画は教えてくれる。
最後のシーンでは以下のテロップが映し出される。広い心で視聴したいものだ。
「WARNING ご注意ください 電車内での空気イスなどの行為は、映像上の演出です。マナーを守って正しくご利用ください」