60年前の『北方領土問題の内幕』とは
安倍・プーチン首脳会談で進展するのか

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「なるほど、そういうことだったのか」

   『内幕』の著者、若宮氏の父は、若宮小太郎氏。この交渉に熱心だった鳩山首相の首席秘書官で、首相や河野氏と終始行動をともにしていた。その克明な日記が、若宮氏の手元に残されていた。日本の外務省は当時の交渉記録を全くと言っていいほど公開していないが、鳩山一行の通訳を務めた野口芳雄氏による会談録(野口メモ)が05年に明らかにされた。河野一郎氏の元秘書の石川達男氏や、河野氏の次男、河野洋平氏の豊富な資料も若宮氏に託されていた。

   日ソ交渉については、すでに鳩山、河野両氏の自伝や、長く交渉に携わった松本俊一氏、当時の取材記者らの資料も豊富に残されている。さらにペレストロイカによって新たにロシア側で公開された資料も多数にのぼる。これらをあわせて、若宮氏は難題だらけだった交渉過程をトレースする。「一か八か、河野一郎の勝負」「フルシチョフとの一騎打ち」など、高度の外交交渉の人間臭い側面を活写している。

    政治記者だったとはいえ、日ソ交渉は著者の専門外だった。それだけに執筆を進めるにつれ、「なるほど、そういうことだったのか」という発見の連続だったという。あれから60年、領土交渉は暗礁に乗り上げたままだ。12月の安倍・プーチン会談ではたして画期的な動きがあるのか。若宮氏はその行方を見定める前の今年4月、訪問先の中国で急逝した。68歳だった。

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