15歳で発表した「超絶技巧練習曲集」12番目の曲
そんな彼の事実上の処女作品、それが、「超絶技巧練習曲集」です。第1版の発表時、リストは若干15歳だったということに、驚かされます。オリジナルの題名「すべての長調と短調のための48の練習曲」という題名が示す通り、当初はバッハの「平均律クラヴィーア曲集」のように、長調短調合わせて24のすべての調で練習曲を書くことを計画していたようなのですが、発表されたのは12曲でした。その後、26歳の時に手を加え、「24の練習曲」と題名を変えても相変わらず12曲で、結局41歳の時に「超絶技巧練習曲」と題名をフランス語でつけた第3版を出版し、現在ではこれが定番となっています。
その12番目の曲・・つまり最終曲となってしまった曲が、フランス語で「雪かき」と名付けられた曲です。右手にあらわれ、長く持続する細かい音符のパッセージが、次から次へと降り積もる雪を表しているかのようです。雪の日の朝のように穏やかに始まるのですが、そこはヴィルトオーゾピアニストが「練習曲」と銘打った作品、だんだんと盛り上がりを見せ、中間部では雪の乱舞ともいうべきクライマックスを形作ります。最後はまた静かになり、鐘の音のような和音で終わるのですが、あたかも雪の日の情景を描いた一幅の絵を見るような気分にさせてくれる曲です。
現代のピアニストでも十分に演奏が難しい「超絶技巧練習曲」は、彼のピアノの師の一人、同じく「練習曲」で有名なカール・ツェルニーに献呈されています。
本田聖嗣