11月15日は、日本の多くの地域での狩猟解禁日です。来年の2月まで、狩猟免許を持った人たちは、狩りをすることが許され、狩りの成果であるイノシシ肉を使った「牡丹鍋」などが、旅館の食卓に登場したりします。近年では、狩猟人口の高齢化、里山の消滅などの理由による熊の下山など、狩猟にまつわる暗い話題が続いていますが、秋が深くなり、狩猟が解禁されると、「大地の恵み」という言葉が思い浮かんだりします。
日本の都市などでは、狩猟シーズンを実感するのが難しくなっていますが、ヨーロッパでは、狩猟はいまだに季節の大切な行事です。パリなどの大都市の中の精肉店でも、狩猟シーズンになると兎・鹿・野鳥・猪などのジビエ肉が並び、星付きのレストランでもごく普通にメニューに上がります。テレビでは「狩猟専門番組」が放映されていたり、誰にとっても身近な狩猟シーズンなのです。
演奏者の後ろに向かって音を出す理由
欧州では、それだけ現在でも狩猟が盛んなわけですから、そこで生まれたクラシック音楽に反映しないわけがありません。事実、狩りをモチーフとした音楽はたくさん存在します。
オーケストラの中でも活躍する金管楽器に「ホルン」という楽器があります。正式名は、「フレンチ・ホルン」といいますが、名前から、先祖は「角(ホーン)」、つまり角笛だったということが推測されます。金管楽器の中で、唯一、開口部が後ろに向いた楽器です。同じ「ラッパ」でも、トランペットやトロンボーンは皆、前向き、客席に向かって大きな音を出すのに、ホルンだけ、演奏者の後ろに向かって音を出します。金管楽器ですから大きな音を出すので、それでも十分聞こえますが。
どうして後ろ向きかというと、これは狩猟のためなのです。馬に乗り、犬を連れて獲物を追う狩猟の行程で、「獲物発見!」などの合図を後続部隊に知らせたり、何より獲物を追う激しく揺れる馬上でしっかりと吹けなければなりません。そのため、最初は片手で持つ角笛だったものが、くるくる回った管を持ち、肩にかけて持ち運べ、後ろへ音を出す現在のフレンチ・ホルンに発展していったと考えられています。