「貴重な映像」「童子が動いてる」
ファンをさらに驚かせているのは、「動画」の公開だ。森田さんは現役当時、テレビの歌番組には出なかったといわれ、「動いている映像を見たことがない」というファンも多く、「伝説の歌手」とも言われていた。
ところが1年ほど前、Youtubeで「夜行」と題された動画がアップされた。3分割されており、全部で20分ほどの短いもの。1980年11月、池袋・三越裏の空地で開催された森田さんの黒色テントでの公演「夜行」を追ったドキュメンタリー映像だ。
コンサートは5日間で3000人の聴衆を集めたという。映像の中では、打ち合わせシーンなどで森田さんが頻繁に登場する。リハーサルでの音合わせの様子や、「地平線」「ぼくと観光バスに乗ってみませんか」などを歌うライブ映像、さらには開幕前の聴衆へのインタビュー、観客席の反応なども紹介され、当時の森田さんのライブコンサートがどんなものだったか、タイムスリップしてわかる内容となっている。
動画には累計で約5万のアクセスがあり、「う・う・動いてる・・・・すげぇ~」など驚きのコメントが掲載されている。
「これは本当に貴重映像ですな! 童子が動いてる」
「自分が生まれる遥か前のアーティストさんなので、動いてる映像は本当にありがたいです!!」
「中学生の頃よく聞いた森田童子さんが歌っている動画を56歳の今初めて見ました」
「この映像は初めて見ました。昔、新宿ロフトのライブに通いました」
このほか、かつて小室等さんのラジオ番組に、ゲストとして出演した時のテープも最近ネットにアップされている。同じフォーク系ミュージシャンということもあり、話が弾んでいる。歌の中で常に「ぼく」という理由や、アレンジをめぐる裏話なども語られ、スタジオ内の弾き語りで「さよならぼくのともだち」を歌っている。
森田さんの消息は83年に活動を停止してから、ずっと不明のままのようだ。最近では2010年5月、朝日新聞の「うたの旅人」欄で、「ぼくたちの失敗」を担当した保科龍朗記者が、仲介者をたぐって接触を試みたが、「とても親しかった人との唐突な死別とみずからの病で『手紙すら書けないほど憔悴している』」という返答だった。