認知症克服の道筋を示す希望の書

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100年以上を要した発生メカニズムの解明

   世界で初めてアルツハイマー病が報告されたのは、今を遡ること110年前のこと。1906年にドイツのアルツハイマー博士によって50歳代前半で発症した女性(アウグステ・D)の症例が報告されたのが最初である。その解剖結果から、アウグステ・Dの脳は、①萎縮しており、②大脳皮質の全域に「顆粒状の病巣」(老人斑)が広がり、③その内部に「線維の緻密な束」(神経原線維変化)が認められた。

   今日も通用する、このアルツハイマー病の3要素は、既に第一例の段階で正確に把握されていたが、アルツハイマー病の発生メカニズムの把握には、思いのほか長い年月を要し、アミロイド仮説がほぼ確定的となったのは、ゲノム解析によって、アルツハイマー病を防ぐ遺伝子変異が発見された2012年だという。

   この結論に至るまでの間、現在の数少ない治療薬の一つであるアリセプト(コリンエステラーゼ阻害剤)を生むきっかけとなったアセチルコリン仮説や、もう一つの治療薬メマリー(NMDA受容体拮抗薬)の根拠となったグルタミン酸仮説も俎上に載った。しかし、いずれも症状の発現を説明する仮説に過ぎず、アルツハイマー病それ自体の原因や発生のメカニズムを説明するものとはならなかった。

   本書では、この110年間、アルツハイマー病研究が技術の進歩に応じて、一歩一歩進んできた歴史を、謎解きのように、わかりやすく教えてくれる。

   ・1960年代に病理研究に電子顕微鏡が導入され、老人斑や神経原線維変化の微細構造が明らかになり、それまで「初老期の痴呆症」と考えられていたアルツハイマー病が高齢者の「老年痴呆」と同じ病気であることが判明した

   ・1980年代には病理生化学のアプローチにより老人斑(アミロイドβ)のアミノ酸配列が明らかとなり、アミロイドタンパクの断片であることが判明した

   ・1990年代以降、家族性アルツハイマー病家系の遺伝子解析が進み、アルツハイマー病の原因遺伝子が立て続けに発見された

   確かに時間はかかったが、一つ一つの新たな技術が、今日のアミロイドβ仮説を導いてきたのである。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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