東京都は国際都市としての東京の魅力向上をはかるため、「水の都構想」の一環として、2016年9月から羽田~臨海部~都心を結ぶ航路を含めた3航路で「舟運」を実験的に実施している。
民間事業者による舟運を積極的に進めることで、クルージングを身近な観光・交通手段として定着させることが狙いだ。舟運では、どんな景色を見ることができるのか、実際に体験してきた。
10人乗りのトローラータイプに乗船
「水の都構想」は2020年の東京五輪、パラリンピック開催に向けて都内の水上交通・観光を整備することで、特に外国人訪日客に向けて東京の「水の都」としての魅力を知ってもらうことを目指す。舟運実験はその一環で、東京都としては初の試みとなる。
「船上から美しいまちTOKYOを見つけよう」
をコンセプトに、「羽田(天空橋)~浅草 縦断ルート」、「日本橋~有明 横断ルート」、「天王洲~勝どき~日の出 周遊ルート」の3種類の航路を2016年12月上旬まで運航する。予約制だが、当日の飛び入りも可能で誰でも参加できる。
記者が今回体験したのは「天王洲~勝どき~日の出 周遊ルート」。約1時間40分かけて東京を代表するオシャレなベイサイドのビュースポットを巡るコースで、船上から見上げるレインボーブリッジを中心に、美しい景色を見ることができるという。
16時30分に中央区の月島、勝どき、晴海の間を流れる朝潮運河から出発する便に乗った。ちょうど黄昏時から夜に変わる時間帯なので「さぞ美しい夜景が見られるはず」と期待したが、当日はあいにくの土砂降り。一抹の不安を胸に船着き場に行くと、洋風のオシャレな小型船が泊まっていた。
この舟運は複数の民間業者による協賛で行われており、参加者が乗る船の種類は時間帯や航路によって異なる。屋形船風のものもあれば、リムジンボートもあるようだ。今回乗ったエスエスV号は10人乗りのトローラータイプで、船上のデッキにのぼって景色を眺めることもできる。
雨が降っているのを忘れるほどの絶景
乗船から15分ほどで、船は運河から東京湾に入る。湾に入ると波の影響で船体が揺れやすくなるので、デッキに出て外の景色を眺める際は手すりにつかまるなどして体を固定すると安全だ。案内役の添乗員さんが見えている景色や運航している場所の詳細、おススメの撮影スポットなどを丁寧に解説してくれるので、予習不要で乗船しても大丈夫。
小一時間が経った頃、船が進む先にレインボーブリッジが見えてきた。このころには空が暗くなり、ライトアップされた橋の全景が浮かび上がる。悪天候で美しく見えるか若干心配だったが、少し霧がかった遠景に光る橋はとても幻想的だった。
船の上からしか見ることができない、ローアングルのレインボーブリッジはまさに圧巻。船はこのまま橋の下を通過し、品川区臨海部の開発区、天王洲に向かう。
第一ホテル東京シーフォートを中心とした天王洲の景色や、通称「港のキリン」と呼ばれる大井コンテナ埠頭の巨大なガントリークレーンなど、ライトアップされた美しいベイサイドを眺めたあと、船は朝潮運河に向けて折り返した。
あいにくの天気の中での体験だったが、雨が降っているのを忘れるほどの絶景を堪能でき、また内容も濃いクルージングだった。悪天でこれなのだから、天気が良い日の快適さ、美しさは測り知れない。3つの航路を全て体験し、海から見た東京の良さを再発見するのも良いかもしれない。これからの時期はどんどん気温が下がるので、冷たい海風に吹かれても大丈夫なよう防寒対策も忘れずに。