「経営」とは、終わりのない挑戦――保証のないものを信じる
次々に発生する難題をクリアし、ようやく完成した『陸王』だったが、大手シューズメーカーの妨害のためにアッパー素材の調達が不能となり、加えて、だましだまし使ってきた設備の寿命が尽き、生産継続が不可能になってしまった。
絶対絶命のピンチを迎え、社長の宮沢の心は揺れ動く。ようやく形を成してきた新規事業を諦めるのか、それとも、100年の「のれん」を失うリスクを覚悟して、外資系企業からの買収の申し出を受け入れるのか。
ネタバレ回避のため、その行く末は自らの目で確認いただきたいが、本書の後半では、「経営とは何か」「経営者の覚悟とは何か」が描かれる。
「ノーリスクの事業なんてありませんよ」
「進むべき道を決めたら、あとは最大限の努力をして可能性を信じるしかない。でもね、実はそれが一番苦しいんですよ。保証のないものを信じるってことが」
「経営ってのはさ、いつも先行きが霧に包まれてる。ウチだってそうさ。『陸王』のために、ここまで人や金を注ぎ込んでるけど、それでうまく行くとは限らない。ある意味、賭けだ」
「だから人生の賭けには、それなりの覚悟が必要なんだよ。そして、勝つためには全力を尽くす。愚痴をいわず人のせいにせず、できることはすべてやる。そして、結果は真摯に受け止める」
「(会社を経営するってことは)その全てに責任をとらなきゃならない。いいときも悪いときも、それをまともに受け止めるしかない」
「万事順調に成長する事業なんかないですよ。これを乗り切ったとしても、また同じようにギリギリの決断を迫られるような状況がいつか訪れるでしょう。結局、会社経営なんてその繰り返しなんです。どこまで行っても、いつまで経っても、終わりなんか無い。でも、それは従来の足袋製造をやっていたって同じなんじゃないんですか。同じリスクをおかすのでも可能性があるほうがいい。そう思ったから新規事業をやろうと思ったんじゃないんですか」
こうした厳しさを乗り越えて進んでいくための極意は、マラソンも同じである。
一度挫折したランナー(茂木)は、復活をかけたレースにおいて、壁と呼ばれる30キロを過ぎた付近で、ギアを上げる。
「体力が失われ、自分の限界と向き合わなければならない時間帯が、マラソンには必ず存在する。苦しさの中で、ともすれば折れそうになる気力を奮い立たせながら、それでも腕を振り、足を前に出さなければならない時間が。ここから先は、敢えていうなら――賭けだ」
「信じて、賭ける」。その挑戦なくして勝利はないのだ。
JOJO(厚生労働省)