仕事を誇りとし、迷いながらも前を向いて働き続ける
池井戸作品が、毎度、働く者の感動を呼ぶのには理由がある。
そこに登場する人物は、誰もが自らの仕事を誇りとし、信念を持って働き続けていること。そして、迷いながらも、前を向いて、挑戦し続けていることだ。
本書でも、見事に「熱い」人間たちが数多く登場する。
「我々はシューズを作っているけども、本当の目的はそれを売ることじゃない。それを履く選手を支えることだ。そして、一緒に夢を追いかけることだろう。それを理解している人間とそうじゃない人間とでは、天と地ほどの差が生まれる」
「私たちが提供しているのはシューズだけどシューズじゃない。魂なんだよ。ものづくりをする者としての心意気というか、プライドというかね」
「本当のプライドってのは、看板でも肩書きでもない。自分の仕事に対して抱くもんなんだ。会社が大きくても小さくても、肩書きが立派だろうとそうじゃなかろうと、そんなことは関係ない。どれだけ自分と、自分の仕事に責任と価値を見出せるかさ」
社長の宮沢は、目標を見失い、「就活」に失敗を続ける息子(大地)に向けて、こう語る。
「どんな仕事してたって、中小企業の経営だろうと、大企業のサラリーマンだろうと、何かに賭けなきゃならないときってのは必ずあるもんさ。そうじゃなきゃ、仕事なんかつまらない。そうじゃなきゃ、人生なんておもしろくない」
「だけどな。全力でがんばってる奴が、すべての賭けに負けることはない。いつかは必ず勝つ。お前もいまは苦しいかもしれないが、諦めないことだな」