東京は世界トップクラスの経済規模を誇る都市だ。さらに清潔度や住民のマナーの良さにおいても外国人旅行者から高く評価されている。ところがそのことに東京都民は気づいていないと、しばしば指摘される。
都民のマナー意識を改革するとともに、文化としての「TOKYO GOOD」を世界に向けて発信していこう――「Tokyo Good Manners Project」(略称TGMP)が2016年9月20日に一般社団法人として始動し、記者発表会が東京ステーションホテル(東京都千代田区)で開かれた。フリーアナウンサーの加藤綾子さんが司会を務めた。
東京を世界に誇る「心地のよい都市」にするために
東京を美術館「TOKYO GOOD MUSEUM」に見立てて、東京のグッドマナーやそれを構成するヒト・モノ・コトを「作品」として定義・収蔵・展示することで、世界中に発信していく――それがTGMPの使命だ。
プロジェクトの具体的な活動は大きく2つに分けられる。「マナーキュレーション」は、現存するグッドマナーを見つけ作品化していく。「マナークリエーション」は、これからのマナー課題の解決アイデアを考えたり、新しいグッドマナーを構想したりする。
発表会ではTGMPの活動を推進する人たちが登壇し、これからの活動について、それぞれの思いを披露した。
日本空港テクノの新津春子さんは、「世界で最もキレイな空港」と称される羽田空港の清掃に従事する環境マイスター。新津さんによれば同空港には次のテーマが存在するという。
「訪れる人に安らぎを。去りゆく人に幸せを」
この言葉にプラスアルファできることはなにか――。現場の清掃員は一人ひとり自分の頭で考え、工夫しながら清掃に励んでいるという。
伏谷博之さんはライフスタイル・マガジン「タイムアウト」東京版の社長として、東京に住む人やインバウンドの外国人観光客に向けて情報発信している。ロンドン生まれの「タイムアウト」は世界25ヶ国39都市で発行されており、東京版は2009年にスタートした。対談相手の伊藤総研さんは、雑誌「BRUTUS」などの雑誌や書籍の企画・編集・執筆、映像制作、ウェブ制作、キャンペーン企画、構成作家と、幅広い分野にわたって活躍するクリエイティブディレクター・編集者だ。
「TOKYO GOOD MUSEUM」に収蔵される予定の作品イメージについて2人は解説した。一例として取り上げられたのが「渋谷のスクランブル交差点」。1日当たり約50万人の人が通り過ぎるこの場所で、横断者同士がぶつからずに済んでいることに海外の人は驚くという。
「ビートルズが渡る(ロンドンの)アビーロードよりもスクランブル交差点のほうが有名なのではないかと思うくらい、海外の方には人気がありますね」(伏谷さん)
「雨の日も傘をさして渡るのがすごくきれいで、万華鏡みたいだと海外で紹介された。ぶつからずに渡るのが日本人の距離感ではないか」(伊藤さん)
TGMPは、企業や市民大学と連携したイベントやワークショップなどの活動を通じ、東京に暮らす・東京で働く人々が主体となって、新たな「TOKYO GOOD」を生み出していくことも視野に入れている。4つの市民大学――シブヤ大学・丸の内朝大学・自由大学・日本橋街大学の各代表者が登壇し、「マナーをきっかけとして、新しい楽しみ方を仕掛けることができるのではないか」「上から決められるのではなく、市民の中からマナーを生み出していきたい」と意気込みを語った。
司会者の加藤さんは、次のように締めくくった。
「皆さんの話を聞いているとプロジェクトの広がりを感じます。私もマナーを守るだけでなく、自分なりの視点で『TOKYO GOOD』を見つけたり、生み出すことにトライしようと思っています」
TGMPは現在、大手新聞社や日本たばこ産業(JT)、日本航空、三菱地所など17の企業・団体がパートナーとして参加している。
同日オープンしたウェブサイト「TOKYO GOOD MUSEUM」は、他の企業や一般市民が参加できるプラットフォームとして永続的に進化していく。