いまの「地方創生」は根本的解決にならない 「東京」をすっとばせ!

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

「発展なき衰退」の可能性がある地域とは

   確かに、東京の力を削いでしまっては、「角を矯めて牛を殺す」といった類の話になってしまう。いかに「世界の東京」の力を維持しつつ、地方を元気にするかが問われている。「物価や家賃の安い地方なら『年収150万円でも自由に生きていける』と感じられるのは、地方交付税、公共事業や農林水産省による手厚い就農支援金、ふるさと納税などによって、東京圏等で得られた税収の一部が、地方に再配分されているからです」という著者の指摘は重い。本書では、東京から離れた国土の末端地域に位置している、北海道、福岡、沖縄の3地域に焦点を当てる。「地方創生のメインエンジンは、グローバル戦略とイノベーション戦略」だという。逆に、旧来型の地域活性策による、「発展なき成長」・「縁辺化する地方」の典型で、いまや「発展なき衰退」へ移行する可能性がある地域は、東北だという。また、「グローバル戦略」では、グローバル化を管理する政府の役割が重要だと指摘する。

   なお、藻谷氏による対談本「しなやかな日本列島のつくりかた」(新潮社 2014年3月)や「和の国富論」(同 2016年4月)に登場する、「東京」にこだわらない、「現智の人」(特定分野の『現場』に身を置いて行動し、掘り下げと俯瞰を繰り返した結果、確固たる『智恵』を確立している人)の、真のイノベーティブなありように触発されるところは多い。

経済官庁 AK

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

姉妹サイト